クリエイティブワーク

【映像制作者向け】カラーワークフロー連載 第8回

映像制作者のためのカラーワークフロー

 

第8回 Windowsでの動画カラーワークフロー

 

すでにWindows環境での動画制作システムが私の手元にあり、基本的な準備は整っています。ハードウェア構成の詳細は、前回の記事(第7回 Windowsで映像制作・モニタリング環境を構築)も合わせてご覧ください。ワークステーション本体はミドルサイズの筐体に、GPUとビデオ出力のための2種類のPCI Expressインターフェースのボードを装着し、アプリケーションはDaVinci Resolveの無償版をインストール済みです。映像のモニタリング環境は、ユーザーオペレーションのためのGUIに27型ColorEdge CS2740。そして、ビデオモニタリングのための2台目に24.1型ColorEdge CS2410を使用しています。これにより、正確なリファレンスモニターによる動画の色再現が可能になります。
今回のモニターセッティングは、写真のようにGUIを縦置きにしてみました。もしDaVinci ResolveのEditページでタイムラインにたくさんのトラックを積み重ねるような編集工程を好まれるユーザーには、このような配置も十分あり得ると思います。

動画カラーワークフロー

左:GUI用(CS2740)、右:モニタリング用(CS2410)

 

Windows環境での色管理システム

さて、このように2台のColorEdgeを使った理想的な環境は手に入りましたが、ここまでの設定で厳格な色再現をユーザーが手に入れられるのは、2台目のビデオモニターだけです。言い換えれば、カラーグレーディングで評価の高いDaVinci Resolveと、ビデオモニタリングのPCI Express接続のハードウェアを経由してColorEdgeに接続した時だけは、正確な色が保証されます。しかし、映像制作のワークフローの中では常にこのような条件で、制作工程を行えるわけではありません。動画の加工でユーザーが真っ先に目にするのは、GUI用のための1台目のColorEdgeです。この1台目の色設定に対して、ユーザーはどのように向き合えば良いのでしょうか。
Windows環境での色管理システム

そこでポイントになるのは、Windows環境でのカラーマネージメントの仕組みです。以前の当連載で、macOSではColorSyncと呼ばれるAppleが開発したテクノロジーを使うことを解説しましたが、これのWindows版ということになります。Windows環境では過去からの変遷はあったものの、現在ではカラーマネージメントの規格の中心になっているICCが策定したICCプロファイルを利用できるシステムになっています。それがWCS(Windows Color System)です。Windows OSに採用されたのはVistaの時で、すでに15年近く経過していることになります。OS内部での処理の詳細に関しては、情報が少ないようで私は入手できませんでしたが、基本的にはICCプロファイルを使用した運用が可能になります。その一面だけを見ると、macOSの使い方と共通する部分も多いように感じます。実際に私が操作したところでは、技術的な奥深くの処理は当然Mac/Windowsで異なるものの、ユーザーの運用面では同じような考え方で対応できる印象でした。その背景にはColorEdge専用のカラーマネージメントソフトウェアであるColorNavigatorの役割が大きいことになります。
 

色管理を行うための操作はColorNavigatorに集約できる

実は、ColorEdgeを使った動画制作環境をWindows環境で構築する際の日常の操作は、ColorNavigatorに集約できるのです。ユーザーが最初にやるべきことは、必要なモニタープロファイルを作成することです。ビデオのモニタリングが目的ですので、ColorNavigatorを使って、色域BT.709/ガンマ2.4/白色点6500Kの目標を作成します。制作環境に応じて、色域DisplayP3/ガンマ2.2/白色点6500Kなど追加の目標も作成します。その後、それぞれの目標にあった正確な色を表示するため、モニターのキャリブレーションを実行します。
ColorNavigator 7では、各目標に2種類のカラーモードタイプ「Standard/Advanced」を指定できます。Standardモードに設定した目標は、短時間でのキャリブレーションが可能です。また、いずれかひとつの目標に対してキャリブレーションを実行すれば他のStandardモードの目標も同じタイミングでキャリブレーションを行います。これに対してAdvancedモードは、ユーザーの好みで目標の調整パラメータを指定でき、より高精度なキャリブレーションを行います。なお、キャリブレーションする際にはひとつずつ実行する必要があります。
いずれのカラーモードタイプでも、ColorNavigatorはキャリブレーションを行うと、モニタープロファイルを作成し自動でOSに設定します。
ColorNavigator 7

ColorNavigator 7 Standard/Advancedモード選択


キャリブレーションの際には、ワークステーションとColorEdgeの間はUSBケーブルで接続しておく必要があります。キャリブレーションの時だけUSB接続をしておき、それ以外の時にはケーブルを外しているユーザーもいらっしゃるかもしれません。しかし、正確な色管理を行うためには「常時」USB接続は維持するようにしてください。なぜなら、USB接続しておくことでモニター前面のスイッチから表示カラーモードを簡単に切替えることができたり、表示カラーモードに連動してOSに設定されたカラープロファイルを自動で切替えたりすることができるからです。
USB接続していない場合は、モニターの見た目だけが切り替わり、プロファイルは切り替わりません。
USB接続は、ColorEdgeを正確に運用するためには欠かせない条件となります。
 

Windows環境固有のモニター設定

Windows環境では、パワフルなGPU製品を自由に選択できる利点が魅力です。NVIDIAのGPUはラインナップも豊富でドライバの更新間隔も短いので、常に高いパフォーマンスを維持できる条件が整っています。Windows環境において、ColorNavigatorを使った色管理を行う場合、GPUのガンマテーブルはデフォルトのリニアにリセットするようになっています。これは、色再現性の高いColorEdgeを使用する際に、GPU側でのガンマ設定がかえって階調低下を招いてしまうことを避けるためなのです。またWindows環境固有の挙動として、ワークステーション(Windows OS側)から接続したモニターのEDID情報は取得するものの、カラープロファイルの生成・適応はしない仕様です。Mac環境ではEDID情報を自動的に取得して、接続しているモニターごとのプロファイルをmacOSとColorSyncが自動生成・適応していますが、Windows環境ではそのような動作はしないようになっています。
Windows環境では、ColorEdgeをColorNavigatorでキャリブレーションして、モニタープロファイルを生成すれば、その後の運用時はColorNavigatorのカラーモードを切替えるだけで済むわけです。
その背景には、先に述べたWindowsの色管理システムのWCSに対して、常にColorNavigatorがコミュニケーションを行い、制御をしているというやりとりがあるのです。その部分をユーザーが確認するには、コントロールパネルを開いて、「色の管理」を起動してみてください。その中にある項目がColorNavigatorから制御されています。この関係は上図のようになり、ユーザー>ColorNavigator>色の管理>ColorEdgeという流れになります。もし、ユーザーが故意に「色の管理」にてColorNavigatorで行った調整とは異なった設定変更を加えてしまうと、色管理の一連の流れが不正な状態になり、色の再現性が担保されなくなります。この仕組みをしっかりと理解した上で、日常のプロファイルの切替え時には、ColorNavigatorだけを使用するという運用ポリシーを守ることを強くおすすめします。
Windows環境固有のモニター設定

コントロールパネル

コントロールパネル画面

なお、コントロールパネル内の「色の管理」に表示されるプロファイル名については、リアルタイムで表示が切り替わりません。そのため、ColorNavigatorで表示カラーモードを変更した場合は、一旦「色の管理」のウィンドウを閉じ、再度開いて確認してください。

色の管理

「色の管理」設定画面

 

GUIモニターの表示色の確認

ここまでのWCSの仕組みを理解した上で、実際に色域BT.709/ガンマ2.4/白色点6500KのプロファイルをGUI用の1台目のモニター(CS2740)に適用してみました。DaVinci Resolveを起動して、Colorページに切替えてビューワにカラーチャートを表示して、その発色と2台目のビデオモニター(CS2410)での発色を目視で比較してみました。意外と、というと叱られるかもしれませんが、私が見る限りほぼ同じような色再現が得られました。実際に自分で一連の設定を行い、結果を目視で確認したところでは、WCSは余計なことはせずにシンプルな処理に徹している印象を受けました。モニターのキャリブレーションを済ませ、適切なプロファイルを指定することで、ICCプロファイルを使用してモニターの色再現を行っているようです。一連の色調整に間違いがなければ、誰が操作しても正確な色再現ができるように感じました。特にColorEdgeの場合はColorNavigatorを使うことでOSへのプロファイルの適用も行うため、操作は難しいものではありません。
GUIモニターの表示色の確認

左:DaVinci Resolveビューア画面(GUI用のCS2740に表示)、右:モニタリング画面(CS2410)

 

モニター上のRGBカラーコード値確認のためのツール

私はこれまでMac環境では、アプリケーションのビューワなどでの発色でRGB値がどのようになっているか確認するために、macOS付属のDigital Color Meterを使用していました。Windows環境ではPowerToysの中に同様の目的で使えるツール「Color Picker(カラーピッカー)」があります。PowerToysはマイクロソフトが無償で配布しているユーティリティで、「Color Picker(カラーピッカー)」の他にも気の利いたツールがセットになっているものです。これを使って、DaVinci ResolveビューアのRGB値を確認してみました。Color Pickerの結果は、見事にチャートのオリジナルの値を示していました。モニタリングを行うビデオモニターはBT.709環境に調整しましたが、DaVinci Resolveのビューア画面も同じようにBT.709に準じた表示がされていたため、正確にモニターに対してRGB値が送り出されていることがわかりました。
ちなみに、DaVinci ResolveのWindows版では、OS側のカラーマネージメント機能を反映させるための環境設定は搭載されていないので、Mac版のように設定のOn/Offに気を使う必要はありません。

Power Toysの設定

Color Picker設定画面

DaVinci Resolve

DaVinci Resolveビューア画面のRGB値を確認


上のスクリーンショットでは、DaVinci Resolveのビューアに表示しているカラーパッチの赤の部分に対して、Color PickerでRGB値を確認しています。カラーパッチのRGB値は175、54、60ですが、ピックしている値も同じであることがわかります。ただ、目視ではありますが、ビューアの色とビデオモニターの色をじっくりと確認すると、わずかにアプリ内ビューアの方が色は薄い傾向にありました。とは言え、大きな差ではないレベルなのでビデオモニターを別途設置できない条件では、簡易的に色をある程度維持したモニタリングでは使用できると私は判断しました。
今回の一連の検証で私が感じたのは、Windows環境で動画の正確な色再現を得るための知識と操作は困難ではないということです。ひとつずつの操作に関しても難易度が高いと感じるところもありません。ただし、いくつかの操作を組み合わせることになるので、その流れを正確に守ることが必要です。これらのことから、安価で正確な動画モニタリング環境を手に入れるためには、Windows環境も十分な選択肢になり得るとの考えに至りました。Windows環境は、ユーザーの操作を信用してOS側は必要最小限の仕組みだけを提供している、というようなスタンスに感じました。
今回はGUIとビデオモニタリングの2台のモニターを使用しました。もし、GUIのためだけのモニターしか使用しない場合でも、上記のようにキャリブレーションを実行してモニタープロファイルを作成し、それをOSに設定できれば、外部ビデオモニターに近い発色で動画のモニタリングはできます。その僅かな違いが許されるワークフローでは、そんな運用方法も利用できます。ユーザーとしては、コストや設置への柔軟性を考慮して、精度を犠牲にしない選択肢が複数用意されていることになります。


 

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筆者紹介|山本久之
山本久之氏 写真テクニカルディレクター、日本大学藝術学部写真学科講師
マウントキュー株式会社代表取締役

20歳より映像業界でお世話になり、すでに36年が経過しました。その間映像技術のさまざまな分野で経験を積み、ポストプロダクションやワークフローが最近の主なフィールドです。
Webサイト:https://mount-q.com

 

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