EIZOの超高感度カメラ導入で、
夜間も鮮明な映像を用いた河川の流速・流量計測が可能に
ハイドロ総合技術研究所は、高度な数値解析や先端的なAI技術をコアに、映像を用いて河川の流速を計測できる流速・流量計測システムを開発・提供しています。このたび、夜間の河川を観測するカメラとして、超高感度カメラ「SSZ-9700」を導入いただきました。そこで、ご担当者に選定理由や導入効果について伺いました。
環境グループ リーダー 南 良忠氏 |
営業グループ 課長 辻 雅之氏 |
貴社について教えてください。
辻氏 ハイドロ総合技術研究所は2000年3月に設立し、主に防災や建設関係に関わる数値解析や専門技術を生かした情報システム技術サービスの提供を行っている企業です。主な取引先は国の研究機関や大学、民間企業です。国内外の大学研究者と密に連携し、最新の研究に基づく数値解析モデルの実用化を図っているのが当社の特徴となります。
業務内容としては、主に「数値解析」と「システム構築」でサービス提供を行っております。「数値解析」は、河川では、水の流れの解析や、橋脚への負荷のシミュレーションに加え、土砂災害のシミュレーションなども取り扱います。港湾であれば、津波・高潮・波浪といった波の動きから土砂の移動等を、環境分野であれば水質や風環境など、また構造物の地震動の影響に関するシミュレーションなど、あらゆる自然現象のシミュレーションを行っております。また、氾濫防災として、近年被害が増大している豪雨による洪水被害に対応するため、浸水シミュレーションによる被害想定や、避難に役立つハザードマップの作成なども行っております。
一方、「システム構築」では、お客様要望に合わせたシステムを構築しております。とくに総合防災関係では、国や自治体様に数値解析と情報システムの知見を組み合わせた防災システムを提供しております。
また新しい技術として、AIや画像解析、ビッグデータ処理、スーパーコンピュータに関する技術支援にも取組んでおります。さらに防災啓発などに利用できる、災害CGやスマホ・タブレットによる災害体験アプリ(ARアプリ)、ヘッドマウントディスプレイを利用したVR映像などの三次元可視化技術をご提供しています。
流速・流量計測ソフトウェア「Hydro-STIV」について教えてください。
辻氏 「Hydro-STIV」は映像と水位情報を用いて河川の流速・流量を計測するシステムです。神戸大学の藤田一郎名誉教授による最新のSTIV※技術と当社のAI技術を融合することで、高精度な計測を実現しました。従来、河川の流速を計測する場合は、橋の上から浮子を落とし、その流れる時間をストップウォッチなどで計測していましたが、台風などによる洪水時に、夜間であっても現場で観測作業を行う必要があり、安全面で非常に大きな問題がありました。Hydro-STIV を活用することで、河川に近づくことなく安全な位置から撮影したカメラ映像を用いて計測ができるため、洪水が発生しているような危険な時でも安全に高精度な流速・流量計測を行うことが可能となります。
※STIV・・・・河川等をカメラで撮影した映像を活用して水表面流速を計測する手法
Hydro-STIV 操作画⾯
映像を使った流速計測の仕組み
EIZOの超高感度カメラ「SSZ-9700」導入の経緯、用途について教えてください。
辻氏 河川の流量観測は豪雨で川の水量が増加した時に、どの程度の流量が流れているか、洪水が発生しそうかなどを把握することで、その河川がどのくらいの流量を流せるか、流せるようにする必要があるのかを把握し、河川の洪水予測や整備計画の検討に活用するのが大きな目的です。そのため計測は雨が降った時、特に洪水のピーク時を確実に計測することが重要です。そして、流量のピークを迎えるのは夜間であることも多く、カメラ映像から流量を計測する場合は、夜間でも河川の流れをしっかり撮影することが必要となります。しかし、こうした場面では河川の周囲は非常に暗く、一般的なカメラでは計測に必要な撮影ができません。そこで何かいい手段がないか探している中で、EIZOの超高感度カメラを見つけました。
南氏 夜間に関しては遠赤外線カメラで撮影した映像で計測を行うこともありますが、遠赤外線カメラは高価で入手が容易でない上に、解像度はあまり大きくありません。そのため、遠くの水面を計測しようとすると、どうしても解像度が不足するという問題があります。大規模な照明を用意すれば、通常のカメラでも夜間撮影ができますが、周辺環境次第で照明を使用できないことも多いです。EIZOの超高感度カメラであれば、そうした課題をすべて解決できるのではないかと考えました。
ご導入後の具体的な効果があれば教えてください。
南氏 映像を使って計測をするには、川の表面の流れを撮影するのが肝心ですが、照明を用いず一般的なカメラで夜間に河川を撮影しても、真っ暗な映像しか撮影されないため計測ができません。ところがEIZOの超高感度カメラでテスト撮影を行ったところ、夜間の暗い河川でも水面のわずかな動きまでとらえることができ、流速計測に必要な映像を撮影することができました。撮影画像の解像度はフルHDと大きくズームレンズも内蔵しているので、川幅の大きい河川やカメラから遠い位置を計測する場合にも対応でき、幅広い条件でHydro-STIVの導入を検討できるのも良い点です。
辻氏 夜間撮影に関するお客様からのお問合せは多数あります。超高感度カメラを活用し、どの程度までの暗い環境であれば撮影できるか、現場に最適な観測環境の提案を含めて具体的なアドバイスができることでお客様から信頼を得られるようにもなりました。
通常カメラと高感度カメラの比較
超高感度カメラSSZ-9700の撮影映像による流速計測結果例
今後の流速・流量計測システムビジネスの貴社展望について教えてください。
辻氏 弊社のHydro-STIVは実際に計測を行う方の安全を守ることはもちろんですが、その計測目的自体も、周辺地域の住民の安心・安全につながっています。普段の生活において、河川の流速・流量を意識することはあまりないかと思いますが、日々計測を行うことで安心・安全が守られています。今回EIZOの超高感度カメラを採用したように、今後も最先端技術の適用により常に改良に努めることで、より使いやすいシステムを作り上げ、いつでも、どこでも河川の状況を正確に把握できる、安心・安全な社会づくりに貢献して参ります。
株式会社ハイドロ総合技術研究所 大阪本社 辻氏 (左)、 南氏 (右)
■ご協力
株式会社ハイドロ総合技術研究所
ホームページ:https://hydrosoken.co.jp/
株式会社ハイドロ総合技術研究所は、社会インフラ、防災、環境、サイエンスの4つのフィールドにおいて、高度な数値解析技術と先端的な情報通信技術を融合させた総合的なソリューションを提供する企業です。大阪本社の他、東京支社、九州支社を構え、さらに国内外の有力大学を始めとする多彩な研究機関と連携し、共同研究も行っています。