月刊「MdN」2016年7月号から転載
作品が印刷された時、画面で確認したのと違った色みになったりしないか。そんな不安を漠然と抱えているクリエイターも多いだろう。イラストレーターの吉田ヨシツギさんもその1人。今回はEIZOのカラーマネジメント対応ディスプレイ「ColorEdge CS2420」を使い、画面と印刷物のカラーマッチングを体験。カラーマネジメントは全くの初心者だという吉田さんだが、カラーマネジメントをすることで、その不安はどれだけ減らせるのだろうか?
深みのある色を組み合わせた、繊細なタッチのイラストを得意とする吉田ヨシツギさん。書籍の表紙や挿絵などを中心に、さまざまなメディアで活躍している注目のイラストレーターだが、最近、仕事などでのイラスト制作では色校正をじっくりチェック・修正できる機会が少なくなっているという。
「色校正を見せていただくことはあるのですが、皆さんもタイトなスケジュールなので、修正結果をもう一度見せてくれるケースは多くありません。データを預けたあとは、実質的にお任せしているのが現状です」
また、オリジナル作品の冊子も制作している吉田さん。個人の作品集を作る場合は通販印刷を使うので、そもそも色校正を取らないで印刷まで進めるケースもある。現状での対策として、制作したイラストを家庭用プリンターで出力し、色の沈み具合を確認している。
「作品によっては調整がなかなかうまくいかず、何度も出力と修正を繰り返すこともあります。こうした作業に時間を取られるのはつらいですし、インク代もかさんでしまって……」
もし、ディスプレイ上で印刷仕上がりの色みを再現できれば、ディスプレイの色を信用して作業できるはず。カラーマネジメントはそうした課題を解決するための近道だ。
●CS2420の液晶画面は、映り込みが少なく目が疲れにくいノングレアタイプで、斜めから見ても色変化の少ないIPSパネルを採用。「今使っているディスプレイは色変化や映り込みが気になるグレアタイプなので、これは快適ですね。本体はそんなに重くないので設置も楽で、液晶のベゼルが細く、シンプルなデザインも気に入りました」 (吉田ヨシツギ) |
意外に簡単な手順でできる色合わせ
EIZOのCS2420は、色再現を重視するクリエイター向けの液晶ディスプレイ。Adobe RGBを99%カバーする広色域で、印刷業界の標準色であるJapanColorなどの色域も忠実に再現できるので、印刷仕上がりに近い色みを画面上で確認できる。だが、そのためにはディスプレイの表示状態を測定し、正しい色表示に調整するキャリブレーションという作業が必要だ。それを吉田さんに実践してもらった。
まず、CS2420に付属のカラーマネジメントソフト「ColorNavigator 6」をインストールし、別売のキャリブレーションセンサー「EX3」を接続する。次に、ソフトの調整目標メニューで「印刷用」のプリセットを選択。
あとは、ソフトの指示に従ってセンサーをディスプレイにセットし、5分ほどの自動処理でキャリブレーションが完了する。
●初心者でも手軽にできる操作 ColorNavigator 6を立ち上げ、測色センサー「EX3」を画面に当てている吉田さん。キャリブレーション操作は全くの初心者だが、とても簡単に操作ができることに驚いた模 様。なお、ディスプレイは使用環境によって経時変化するので、約200時間ごとにキャリブレーションし直すのが望ましい |
実際に吉田さんが制作したイラストをCS2420に表示させ、同じ作品の印刷物と比較。双方が近い色みになっていることが確認できた。今回は印刷物に合わせたが、もしWeb標準の色表示にしたい場合は、ColorNavigator 6で調整目標を「Web向けコンテンツ作成用」に設定してキャリブレーションを実施すればいい。一度キャリブレーションを行うとプロファイルが保存されるので、用途にあわせて瞬時に色表示を切り替えて確認することができる。
「こうして、ディスプレイ上で印刷物に近い色みが表示されれば、仕上がりをイメージしやすく、安心して制作できそうです。今までカラーマネジメントがどういうものか分からなかったのですが、実際はとても簡単な手順なので、自分にもできそうと自信が持てました」
●印刷物と近い色みに
キャリブレーション済みのCS2420に作品を表示させ、印刷された作品と比較して双方の色合わせを確認。細かい色のニュアンスや深みまでを忠実に再現できるのも、CS2420の強み。印刷物の確認に最適な別売の電気スタンド「Z-80pro-EIZO」と合わせて使うと、より精度の高いチェックができる
コストを削減し効率を高める
また、吉田さんはCS2420のディスプレイの表現性そのものにも注目。
「液晶なのに黒が締まっていて、深い色がきれいに表現されています。ハイライトでも白浮きが少なく、細かいニュアンスが忠実に再現されているのには驚きました。つい最近、板型ペンタブレットから液晶ペンタブレットで作業をするようになったのですが、きちんと色管理されたディスプレイと合わせて使うとより快適に感じますね。このCS2420で作品全体の色みを確認しながら、液晶ペンタブレットで細部の描き込みをする……という風にすれば、スムーズに理想的なイメージが表現できそうな気がします」と、作品クオリティを高める上でのメリットも実感したようだ。
「これまではプリンターの出力紙をよりどころにしていたので、色の確認はあいまいで時間を取られていましたが、カラーマネジメントを理解して正しい色表示で作業できる環境にしておけば、その時間を作品に効率的に向けられることが実感できました。次に設備投資をするなら、ディスプレイの導入を検討したいと思っています」
色校正で納得がいくまで修正するようなワークフローが難しい現状である以上、クリエイターにできることは、安心して印刷まで任せられる作品データをつくること。カラーマネジメントのできる環境は、その時に心強い味方になってくれるはずだ。
試用したイラストレーター吉田ヨシツギ[よしだ・よしつぎ]ナノウのCDアルバム『Waltz Of Anomalies』(BALLOOM)のジャケットイラストや、西尾維新の小説『りぽぐら!』(講談社)の挿絵などを多数手がけるイラストレーター。 url. sekitou.sub.jp/ |
カラマネのツール
ColorEdge CS2420
Adobe RGBを99%カバーし、色再現性を極めた24.1型液晶ディスプレイ。別売のキャリ
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同じ24.1型の最新機種CS2400Sの製品ページはこちら
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