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クリエイティブ

動物写真家 岩合 光昭 氏

導入製品

  • ColorEdge CG319X
     
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岩合 光昭

野生動物の息吹を感じるその写真で「ナショナルジオグラフィック」誌の表紙を日本人で唯一、2度にわたって飾るなど、世界的に高く評価されている動物写真家。また、ライフワークであるネコの撮影にも力を入れ、2012年に始まったテレビ番組『岩合光昭の世界ネコ歩き』(NHK)は多くの人に愛されている。

岩合 光昭 オフィシャルサイト: https://iwago.jp/


岩合氏は長年ColorEdgeを愛用しており、今回新たに31.1型「ColorEdge CG319X」を導入されました。ColorEdgeを選ぶ理由や、撮影でのこだわり、世界ネコ歩きについてなど、さまざまなお話を伺いました。
 

ColorEdgeを選ぶ理由

EIZOモニターを使用するようになったのは、20年以上前に印刷所の方におすすめされたことがきっかけです。EIZOのモニターは色再現やキャリブレーションの精度が高いと聞き、導入を決めました。昔はもっと機材にこだわりを持っていて自分で選んだりもしていたのですが、年を取ってこだわりを持たなくなったというのが実のところです。ただ、カメラもカメラメーカーがおすすめするものを使っていて、機材に詳しい方がおすすめするものは安心して使えますし、そういうものを選ぶようにしています。

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事務所内に設置されたColorEdge CG319X
 

本を出版する際は、印刷所の方に事務所に来ていただいて、CG319Xに写真を表示して打合せをしています。今出版している本の写真は、仕上がりの前にすべてColorEdgeで確認して最終的な色を決めています。色校正はどうしてもデイライトで判断したいので、今は紙ではなく主にモニターで判断を行っています。色校正をしているときに、印刷所の方が「やっぱりColorEdgeはいいですね。」と毎回おっしゃられます。セレクトに関しては、撮影する写真の量が膨大なのでロケのときにノートPCで行ってしまいますが、事務所に戻ってきて見るときにはやはりモニターで見た方がいいなと思いますね。
 

撮影のこだわり

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動物を相手にしていると、「自分のこだわり」に固執してしまうと撮れないんです。こう撮りたいというようなこだわりは持たずに、その子をいかに美しく、その子らしく撮れるか、被写体のことを一番に考えていますね。光や影の位置は自分で決めるようにしていますが、『こだわらないこと』が僕のこだわりですかね。

モニターを選ぶ際も印刷所の方のおすすめで決めたように、写真集を作るときも、編集やデザイナーの方の意見を必ず聞くようにしています。写真集は見ていただく方がいて初めて意味があるものなので、肩に力を入れずに、自分ひとりの意見で思い込まないように、いつの間にか、みんなの意見を聞いて作るようになりましたね。

一番大切にしていることは、モデルさんが野生動物でも「この写真に満足してくれるかな?」と考えたり、「その動物らしく写っているかな」と考えたりする、そういうことがとても大切だと思っています。

コロナのときの撮影について

海外に行けなくなり、19歳のときにパスポートを持って以来、初めて失効しました。コロナが落ち着いたときにケニアに行こうと思ってパスポートを確認したら期限が切れてる!となりました。

海外に行くのが難しい状況でしたので、NHKの『岩合光昭の世界ネコ歩き』では国内ロケをやりましょうということになりました。3年半で47都道府県すべてを巡ることができました。コロナ禍の撮影は本当に大変でした。地方に行って、もし我々がコロナに感染していて現地の方が感染してしまったらと考え、とても神経質になっていました。もちろんマスクはして、手指の消毒をするじゃないですか。そうすると、「いい子だね」と撫でると、消毒のにおいを嫌がるネコもいて。そんな子でも根気強く撮影をしていると、近寄ってきてカメラにすりすりしてくれたり、足元を頭でごりごりしてくれたり、「本当にネコがいてくれてよかった!」と思いましたね。
 

世界ネコ歩きのロケ地選び

番組が始まった当初は、これまで僕が世界中を旅した中でネコがいた場所を思い出しながら国選びをしていました。しばらくすると僕が行った国だけでは足りなくなったので、調べてもらって行くようになりました。これまでネコ歩きでは50か国、70地域くらい訪れていますね。

国内だと最近はネコ探しが大変です。海外の方がまだいますがそれでも減りましたね。特に先進国はネコが外にいることをよしとしない国が多くなってきています。日本も今はネコにとって外では暮らしづらい環境になっていて、例えば漁港に行ってもネコを見かける機会が少なくなりました。漁師さんに聞くと昔はたくさんいたけど今は魚が捕れなくなっちゃったからな、とおっしゃっていました。すごく複雑な思いになるときがありますね。
 

撮影するネコの選び方

 mitsuakiiwago_img004『岩合光昭の世界ネコ歩き』(NHK)は2012年に始まったのですが、海外の場合は現地にお住まいのコーディネーターにお願いして、ネコのいるところを探して、、、という感じで最初はやっていました。現地の方はどういう番組なのかを知らないので理解してもらうのが大変でしたね。今は番組のDVDを事前に送っているので理解してもらいやすくなりました。撮影クルーは7人で動いているのですが、その人数でロケハンをするは難しいので、まずディレクターが前乗りして、コーディネーターと共に候補のネコをチェックして、ネコのご主人に本当に番組に登場できるのかの確認や、実際にそのネコがどういう動きをするのか、何を食べているのか、恋人はいるのかといった素行調査をします。

偶然撮れる画ももちろんあるのですが、ご主人や面倒を見てくれる方からこういう面白いことをするよといった情報を教えてもらい、その瞬間を逃さずにカメラでとらえられるかどうかというところが大事です。また、外での撮影は光の選び方にこだわって撮影を行っています。だからどうしても90分の番組1回のロケに2週間ほどかかってしまいます。

 

~京都のネコ「くろべえ」のお話~

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これは京都の常寂光寺という紅葉がきれいなお寺で撮影しました。この子はご住職と暮らす「くろべえ」(当時1歳)。朝、ご住職と境内を散歩します。8時になるとご住職は本堂に入ってお勤めを始めるのですが、くろべえは一緒に行けないので散歩を続けます。僕たちを案内するかのように境内を飛んで歩くんです。たまたまこの場所に連れていかれてカメラを構えて撮影を始めたときに、なんという美しい光景だろうと思いました。僕が使うビデオカメラには被写体へのマイクと僕の方に向いているマイクの2つが付いているのですが、ふいに「日本に生まれてよかった」と言っていました。その言葉が出たことに自分でもとても驚きました。

「京都のネコ」というよりも、僕にとっては「ネコの京都」なんですね。このときネコを通して京都を見せてもらいました。京都の美しさは海外の方を含め多くの方を惹きつけますよね。ネコを通して僕も魅了されました。世界中からヒトを集める力が京都にはあるなぁと感じた瞬間ですね。

この写真に登場する子は黒色なので、モニターでも黒の階調がきれいに表現できることがとても大事なんですよね。ColorEdgeだと階調の豊かさが見えると思います。三毛ネコは別として動物はそんなに色がないんですよ。なので作品では周囲の色で助けてもらわなければならない。周りの色の環境・条件がそろったところで撮影できたときは喜びを感じますね。
 

~カナダのホッキョクグマのお話~

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これはカナダのマニトバ州チャーチルという町で撮影した写真です。この子をどうやって見つけたかというと、現地でご飯を食べているとき、隣の席の男性が写真を得意げに見せていて。横から見たら、ホッキョクグマが花の中にいる写真だったんです。驚いて、いきなり話しかけて、どうやって撮影したのかを聞きました。彼は郵便配達員でした。カナダはとても広いので、場所によっては郵便物を飛行機で配達します。このヒメヤナギランという紫の花が、毎年咲く小さな島があって、飛行機の窓から見下ろしたら、花の中にホッキョクグマがいてびっくりしたと。無理して、出来るだけ低く飛んで撮影したそうです。

すごい場所があるなと思って、どうやって行ったらいいかとか、無人島なのでキャンプをしないといけないとか、とことん計画を練りました。そして満を持してヘリコプターで撮影に行きました。テントを張って、夜ホッキョクグマが来たら危険だということでそのテントを囲むように鉄線を張って、1万ボルトの電流が流れるようにしました。カナダの北に位置する場所だったので、夏季ということもあり午前3時ぐらいでかなり明るくなりました。僕はもう我慢できなくなって、大きな脚立の上に乗って島まで泳いでくるホッキョクグマを双眼鏡で探しました。6時ぐらいになっても来なかったのでそろそろご飯を食べようと脚立から降りたときに、パッと横を見たら白い塊がいて。鉄柵に向かって真っすぐ僕の方へやってくるんですよ。鼻が鉄柵に触れて電流が流れたのでこれで向こうに行ってくれると思ったのですが、ふんって顔をしただけで、なんてことないみたいなんですよね。本当に強い動物だなと。こちらに向かって来ると困るので、「クマさんお願いだからあのフェンスを回って、花畑の中に行って」と言ったら本当にその通りにやってくれてこの写真を撮影することができました。とてもいい子でした。
 

今しか撮影できない光景

この間、青森県八戸を中心にネコを撮影したときに、偶然親子ネコをたくさん見つけて撮影をしました。このような機会は最近滅多になく、きっとこの映像は貴重になるな、10年後にはもう撮影できないだろうなと、そういう思いで撮っていました。

自分が感じていることは、写真を見られる方々も同じように感じるんだと思います。写真展を開催した際に、すごく熱心に写真を見て、キャプションを読んで、「あ、こういうところにネコがいるんだね」とおっしゃる方がいます。写真展はテレビや本とはまた違うもので、写真をご覧になっているお客様の姿を実際に後ろから見ることができます。目頭を押さえている方もいらっしゃって、写真から何を感じ取られたのかつい聞きたくなります。たった1枚の写真がヒトの心を動かす力を持つ、写真家冥利に尽きます。本当にありがたいことです。

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導入製品

本事例の内容は取材当時のものであり、閲覧時点で変更されている可能性があります。ご了承ください。


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