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クリエイティブ

画像編集スタジオ House of Retouching

 House of Retouchingは、ポーランドで最もよく知られている画像編集のスタジオです。Vogue、Disney、Warner Brothersなどをクライアントとし、長年にわたり多くの一流ブランドと共に制作を行ってきました。つい最近、創設者であるTomasz KozakiewiczとKrzysztof Gadomskiの二人は、画像編集のレタッチスキルを習得したい人たちに向けた個性的なレタッチ教室を作り上げたばかりです。

House of Retouching

House of Retouching

House of Retouching

 

お二人のこれまでの経緯をお聞かせください。また、なぜ撮影ではなくレタッチを選ばれたのですか。

Tomasz(以下T):このスタジオを始める前は、二人とも広告の仕事をしていました。Krzysztofはコンピューターやプログラミング、私は撮影技術やソフトウェアが専門で、得意な分野はそれぞれ異なっていました。私たちがレタッチを選んだ理由は、クリエイティブな情熱を注ぐのにパーフェクトな組み合わせだったからです。専門分野がそれぞれ違っていたおかげで、お互いに補い合うことができ、とても上手くいっています。どちらかが手に負えないと感じた時でも、もう片方は確信をもっていたり、その逆だったりします。当然のことですが、一人より二人で考える方が良いアイディアが生まれますね。

House of Retouching
Tomasz Kozakiewicz氏

Krzysztof(以下K):撮影は、それまでTomaszが担当していました。しかし、新しいスタジオを開設する際に、お互いの技術の連携がもっとスムーズにいくように、より良い方法を模索しなければなりませんでした。画像編集は、写真家のように脚光を浴びることはありませんが、創造性を表現できるという点では大きな余地が残されています。デジタル撮影の時代になってからは、レタッチは撮影と同じくらいに重要になりました。大幅なレタッチを施して仕上がった写真については、私たちも作品の共作者と言ってもよいくらいです。

House of Retouching
Krzysztof Gadomski氏

 

どのような写真が好みですか?特に一緒に仕事をしたいと思うアーティストはいますか?

T:うまく撮影された写真は、レタッチも簡単です。それは明らかです。

K:私たちにはファッションやポートレートなど、特にお気に入りのカテゴリーはありません。もちろん、個人的な好みはあって、表現が柔らかいものよりも、いくらかコントラストのついている写真の方が好きです。しかし、私たちにとってもっと大事なのは、作者がその作品に注いだ情熱と思いの強さです。多くの場合、それは繊細で、写真家自身の人となりの表れでもあります。そのような作品に出合えた時は、私たちも作業に力が入ります。

T:確かに、著名な写真家の作品だと、常に期待は膨れ上がります。だからと言って、名前はそれほど重要ではありません。私たちにとって、クオリティこそが絶対的な基準だと断言できます。まれに、心にいつまでも残るような素晴らしい写真に出会うことがあります。そのような時は、アーティストとしてのクリエイティビティが刺激されます。

 

チームで仕事をするというのは、どういう感じでしょうか。各々がプロジェクトの異なる部分を受け持つのでしょうか?

K:私たちは、ゼロから一緒に仕事を始めているので、チームとして仕事をする場合の最適な方法をすぐに見いだすことができました。常に互いの考え方を尊重するようにしており、長い議論の末に、異なる結論に決まることも頻繁にあります。現在では、その方法論でルーティンを決めて、1つのデータファイルを数人の作業者が同時に編集しています。ルーティンによって創造性が狭まると思われるかもしれませんが、私たちの場合まったく逆のポジティブな効果を得られたのです。

T:ルーティンを決めてそれを継続するのは、最初は、簡単ではありませんでした。でも、それが後の成功の鍵になったと思います。私たちは、Photoshopで複数のレイヤー・グループを作り、特定の順序を決め、すべての作業者がどのように作業すべきか戸惑うことが無いようにしました。熟慮を重ね、考え抜いた手法を用いることで、テクニカルな束縛から解放され、創造性を更に発揮することができたのです。つまり、「どのように」ではなく、「何を」に作業者は集中することができるようになったのです。「この写真に何を加えて、何を変えたらもっと良い作品になるか」という感じです。

K:作業の各段階には、それぞれ異なる魅力があります。それでも、二人とも色処理の工程が好きなのは共通しています。重要な工程であると同時に、とても興味深い作業でもあります。しかし、私たちの場合、そういう理由でこの作業を切り分けたりしていません。10年ほど一つのルーティンに沿ったやり方をしているので、過去に自分たちが編集した写真を渡されても、どちらが作業したのか見分けるのは不可能に近いです。

 

あなた方の作品には、他のレタッチャーの作品と見分けられる特徴のようなものはありますか?

K:難しい質問ですね。(笑)

T:どうして答えるのが難しいかというと、私たちは写真家によって異なるアプローチをしているからです。私たちは、いわゆる自分たちが〝自然哲学″と呼んでいる考え方を大事にしています。それは、写真を編集後でも被写体が自然に見えるようにすることです。加えて、私たちの編集には独特ないくつかの法則があります。ですから、レタッチ後の写真には、いくらか共通している特徴があって、それは明暗とカラーバランスだと思っています。

K:ほとんど同じ意見です。大切だと思うことをもう一つあげるとすれば、作者の意図を尊重することです。作者の意図に寄り添うことで、編集しすぎることなく、潜在的に眠っている可能性を引き出すことができるのです。繰り返しになりますが、私たちは、自身の自然哲学に忠実でありたいと思っています。自分たちが編集する写真は、コンピューターグラフィックスのようにはしたくないのです。

 

作業における機材の重要性について、どのように考えていますか?

T:画像編集では、ハードウェアにとても厳しい要件が課せられます。一番重要な機材は、言うまでもなく、コンピューター、モニター、タブレットです。EIZOの宣伝のように聞こえるかもしれませんが、どれか一つを選ぶとしたら、私ならモニターです。それは、本心からそう思うからです。PCのデータ処理が遅くても待つことはできますし、粗末なタブレットでも不適切なラインを修正することはできます。しかし、モニター表示やキャリブレーションが不適切で、編集する画像の本当の色が分からなければ、絶望的です。

K:モニターが重要なのは事実ですが、コンピューターをはじめタブレットやソフトウェアを軽視しているということではありません。満足できる結果を得るには、すべての機材を連携させる必要があります。また、編集作業は仕上がりの美しさだけでなく、速さも求められます。特に、最近のカメラは数百メガピクセルの高解像度画像を扱うため、機材が良くなければ到底、納期に間に合いません。スピードに関して言えば、ハードディスク装置からモニターの解像度まで、機材のすべての構成要素が影響します。

 

ハードウェアに関しては詳しいですか?ツールはどのような基準で選んでいますか?

K:この業界には長くいるので、実用的知識は多く持っています。それを専門としている人ほどではありませんが、自分たちの使用する機材に関しては詳しいと思います。小さいスタジオでありながら高い品質を求められているので、新しい機材を購入する時は、何がベストかということを基準に判断しています。クライアントは、私たちにハイクオリティな作品を継続的に供給することを期待しています。同様に私たちもハードウェアには高品質で長く使える製品を求めています。

T:実際に使っているのは、Apple、EIZO、Wacom、Capture One、Adobeの製品です。

K:これまで常にトップブランドを選択してきました。長い目で見ると、これが最良かつ一番コストパフォーマンスが良い方法だと思っています。品質の劣る機材だったら、過去の私たちのプロジェクトの多くは完成できなかったでしょう。また、機材の信頼性において計り知れない価値があるので、コストパフォーマンスが優れているとも言えます。

T:年式のかなり古いMac Proを何台か使っていますが、今でもバリバリ仕事をしてくれています。Wacomのタブレットは、すでに10年ほど使っていますが、まだまだ頼もしい存在です。EIZOのモニターをスタジオに採用してから5年経ちますが、これまでたった1つの問題も起こったこと事がありません。最初は24型モデルからスタートし、現在はCX270を使っています。非常に優秀なモニターで、同じ価格帯の中では突出しています。現在、30型モデルへの切り替えを検討しているところです。ワークスペースが広くなり、解像度も上がると、作業効率が改善してコストもかなり削減できると思います。私の場合、21型モデルから高解像度の24型モデルに変更した時の効果が歴然でした。画像の広い領域を一目で見ることができて、レタッチ作業がよりスムーズで速くなったことを実感できたのです。

K:大きな画面で作業することには、多くのメリットがあります。ご質問にお答えするとすれば、私たちはモニターの購入前に、必ず表示性能を詳しく調べます。例えば、Adobe RGBカラースペース全体を再現できるか、できない場合はどのくらいカバーしているかなどをチェックします。オンライン上のレビューを多く読んで、モニターについてできる限り調べます。どのようなパネル技術を採用しているか、セルフキャリブレーションや自己補正の機能はあるのか、どのような保証が付いているかなどです。価格自体は言うまでもなく重要です。EIZOのモニターに関して言えば、品質や信頼性という面でのコストパフォーマンスはとても高いと思います。

 

レタッチを習得する最良の方法は?

T:もちろん、私たちの編集講座に参加することです。(笑)

K:講座では、私たちの編集作業の全容を分かりやすく伝えるようにしています。習得するのに数年かかるようなスキルや間違いやすい点についても惜しみなく教えます。機材に習熟しながら業界関係者と知り合う機会も得ることができます。
最後に、優秀なレタッチャーを目指すのであれば、仕事を通じて絶えず自己研鑽していく覚悟は必要です。自分にあった手法やスキルを見出すには時間がかかるものですから。

House of Retouching

本事例の内容は取材当時のものであり、閲覧時点で変更されている可能性があります。ご了承ください。


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