安定の高画質に加えて“USBケーブル1本”の利便性…鉄道写真家・村上悠太さんに聞きました
※下記の記事は2022年5月20日に「デジカメ Watch」に掲載されたものです。
(聞き手:榊信康)
村上悠太さんとCG2700S。愛用のノートPC、MSI Prestige 15との組み合わせで試用してもらった
ディスプレイメーカーとして知られるEIZOは、ハードウェア・キャリブレーション対応モニターColorEdgeシリーズの新モデルとして「CG2700S」および「CG2700X」を発売する。 どちらも高輝度、ハイコントラストのIPSパネルを使用しており、Adobe RGBカバー率99%、DCI-P3カバー率98%の色域を誇る。パネルサイズはCG2700Xが26.9型、CG2700Sが27型とほぼ同等だが、解像度はCG2700Xが4K UHD(3,840×2,160、164 ppi)、CG2700SがWQHD(2,560×1,440、109ppi)と異なる。パネルサイズと合わせてみるに、両機ともHiDPIでの運用を想定したモデルと思われる。 このうちCG2700Sは6月16日に発売が決まり、直販サイトEIZOダイレクトでの予約販売が開始された。 |
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ColorEdgeは、高精度なキャリブレーションができるハードウェア・キャリブレーションが可能であるが、その中でも上位ラインナップにあたるColorEdge CGシリーズはキャリブレーションセンサーを筐体に内蔵しているのが定番である。これにより、キャリブレーションにユーザーが要す手間暇を解消し、設定さえしておけば自動的に正確な表示環境を保ってくれる。
最大の特徴は、USB Type-C Altモードでの電力供給力が向上していることだ。CG2700Xは94W、CG2700Sは最大92Wの給電能力を備える。USB Type-Cでの電力供給が可能なEIZOモニターでは過去最大の給電ワット数である。これまでのUSB Type-Cケーブルを1本差すだけで、映像やUSB伝送まで実現してくれるのも便利だったが、ノートPCへの給電器としても遜色のない能力まで手に入れたのである。
ちなみにEIZO Webサイトでは、Macとの接続・給電の互換性情報を公開している。
ColorEdge CG2700S、CG2700XとUSB Type-C搭載デバイスとの互換性情報
それによると、16インチのMacBook Proにおいても十分給電できることが分かる。
もう1つ付け加えると、ビジネスモニターのFlexScanシリーズで見られた有線LAN機能も搭載している。これらの機能をUSB Type-Cケーブル1本で利用できるのだから、ノートPC用の外付けモニターとしては打ってつけの製品と言えるだろう。
今回は写真家の村上悠太氏に、CG2700Sを試用したインプレッションを語っていただいた。鉄道写真家である村上氏はフィールドでの撮影が主体となる。必然的にノートPCの使用頻度は大きいと思われる。
村上悠太1987年東京都生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業。「ひとと鉄道、そして生活」をテーマに制作活動をおこなう。西武鉄道公式写真、Webサイトメインビジュアルや東京都交通局公式写真撮影を担当。鉄道旅を通して日本と台湾の観光促進、相互交流にも携わり、2019年台湾観光貢献賞(台湾政府 観光局)を受賞。高校時代には自身も関東ブロック代表として第11回「写真甲子園」に出場。出場経験者として初の審査委員も担当。 |
撮影:村上悠太
目次
“ColorEdge”に高い信頼感
キャリブレーションセンサー内蔵でいつでも表示環境が安定
27型という絶妙なサイズ
ColorEdgeらしい安定の高画質
ノートPCユーザー注目のUSB Type-C接続
プロクオリティの表示品質+ノートPCとの高い親和性
“ColorEdge”に高い信頼感
——最初に現在の作業環境を教えていただけますか?
自宅ではMac miniを使用し、撮影時には15型のWindowsノートPCを携行しています。自宅のモニターは30型の4Kモニターと、ちょっと古い機種ですが24.1型のColorEdgeが1台という構成ですね。ColorEdgeを先に導入し、30型の4Kモニターを足した形です。
基本的な作業の流れは、写真の場合、撮影から帰ってMac miniにデータを流し、モニターで見ながら現像という事が多いです。
ただ、最近はパワフルなノートPC(MSI Prestige 15)へ新調したこともあり、Macを介さずにノートPCをモニターに繋いでそのまま作業することが増えていますね。動画については使用しているソフト(EDIUS Pro)がWindowsにのみ対応しているので、ノートPCでの作業になります。
背面にはパンチングメタルを採用。放熱を冷却ファンを用いずに意匠で実現している |
——村上さんは以前からColorEdgeのユーザーですが、最初にColorEdgeを選ばれた理由を教えてもらえますか。
ColorEdgeを使い始めたのは、当時使っていたiMacのモニターがグレアになったのが契機です。グレアよりノングレアの方が良いですから。そこでMac miniとモニターという構成を考えて、ColorEdgeを選びました。それに大学がColorEdgeを導入した環境でして、そこが自分の1つの原点であり憧れだったんですね。 フリーランス(2017年独立)になる前に購入したので、かなり長いこと使用していますが、未だに表示に不満を感じたことは無いです。今にして思えば良いものを買っておいてよかったな、と思います。独立した直後に壊れてたら目も当てられませんし。そんなこともあってColorEdgeへの信頼感は凄く高いですね。 |
キャリブレーションセンサー内蔵でいつでも表示環境が安定
——そのColorEdgeですが、キャリブレーションセンサー内蔵型でしょうか?
違いますね。当時でもセンサー内蔵型は出ていましたが、手が出る価格では無かったです(笑)ハードウェアキャリブレーション自体は必要な機能だと思っていますが……
——今回、CG2700Sの内蔵センサーを試していただいたのですが、使い心地はいかがでしょう?
やっぱりセンサー内蔵型っていいですよね。何もしなくて良いというのは非常にありがたいです。
安定した表示環境を整える大事さはわかっていても、実際に厳重なパッケージからセンサーを取り出して、ケーブルの取り回しに気を付けつつセンサーを取り付けて、カラーパッチ測定を眺めるというのは、忙しいときには特に億劫になりがちですから。
CG2700Sはキャリブレーションセンサーを内蔵している。設定すれば定期的にセンサーが起動して自動でキャリブレーションが始まる |
もちろんカラーマネージメントソフトウェアのColorNavigator 7もCG2700Sに早速対応している。キャリブレーション中にも他の作業が可能になった |
27型という絶妙なサイズ
——今回試していただいたCG2700Sは27型ということで、普段使用されている24.1型と30型の中間くらいのサイズになります。使用感に違いはありましたか?
色評価はColorEdgeでやることが多いのですが、24.1型だと表示サイズに物足りなさを感じることがたまにありました。あと、動画編集は24.1型で行なっていまして、こちらは常に表示サイズが足りない状態です。私は動画編集ではとにかくタイムラインを増やす癖がありまして、垂直解像度はあればあるほどありがたい(笑)実際に使用したところ、数値の違いから受けていた印象以上に快適になって驚いています。 あと、30型と比べた場合のメリットは設置スペースですね。特にCG2700Sは省スペースにデザインされていますし、USB Type-C接続の恩恵もあって、机のまわりが凄くスッキリしました。
——解像度はWQHD(2,560×1,440)ですが過不足はありましたか? |
ColorEdgeらしい安定の高画質
——画質についてはいかがでしょう? 24.1型のColorEdgeと比べて違和感などはありましたか?
これが驚くほど違いが無かったですね。同じEIZOの製品だからなのかな?違うモニターに視点を移しても表示が同じというのは新鮮でしたし気持ちが良い。もちろん画質について不満はありません。 この紅葉と逆光の写真などは顕著な例ですけど、ピークが飛んでいるのは当たり前として、見て欲しいのはその周囲です。このハイライトの粘りというか、コクというか、ギリギリのところまで描写してくれるので自然と臨場感が醸し出される。 |
あと、私の撮る写真は「鉄道」と「人(生活)」を組み合わせることが多いんです。人そのものを写さなくても、炊煙や小さい光などで生活を感じさせることがある。これがしっかりと描写できているかで印象が変わってしまうので、存在感を正確に再現してくれるColorEdgeの存在は凄く大きいです。
撮影:村上悠太
私がColorEdgeに十全の信頼を寄せているのは、出荷時の性能だったり、安定性や補償など色々な要素があるのですが、それもこの画質があってこそですね。
もちろん、視る方の環境によって変わるのがデジタルの難しいところですが、送る側としてより良い環境は整えておきたい。どうしても、しっかり見てもらいたいという作品は、プリントという形になると思いますが、それこそしっかりとキャリブレーションされたモニターは必須ですからね。
ノートPCユーザー注目のUSB Type-C接続
——この製品の目玉のひとつ、USB Type-C接続についてお話をうかがいたいと思います。
最初は驚きでしたね。ノートPCにケーブル1本で接続できる。ノートPCから映像信号をモニターに送ることはもちろん、モニターからノートPCへは電源が供給される。
USB Type-CケーブルはHDMIやDisplayPortのケーブルよりも細いですし、さらにノートPCにつなぐ電源ケーブルが必要ない。これはノートPCの外付けモニターとして使うことを考えると、すごい進化ですよね。
ノートPCとUSBケーブル1本で接続。映像信号を送れるのはもちろん、CG2700SのUSB出力をUSBハブのように活用、さらにCG2700SからノートPCへ給電される
CG2700Sの背面にあるコンピュータ接続端子。左からHDMI入力、DisplayPort入力、USB 3.1 Gen 1(Type-C、DisplayPort Alt Mode)、有線LAN(1000BASE-T対応)、USB 3.1 Gen 1(Type-B) |
ノートPC(MSI Prestige 15)側のUSB Type-C端子 |
映像と音声をケーブル1本で扱えるHDMIも便利ではあったのですが、USB Type-Cはさらに便利ですね。先ほども少し触れましたが、最近自宅でもノートPCで作業するケースが増えているので、この方式での接続は快適そのものです。
——さらにCG2700Sだと、92Wの給電能力も持っています。
ええ、これ本当に充電が速いですよ。先ほどまで半分くらいだったのに、少し話している間にもうほぼフルになってます。大して負荷がかかる作業をしていないにしても、これだけ速く充電できるのは凄いです。
私はバッテリーの充電に頓着する方ではなくて、警告が出てようやく充電を始めることもあるのですが、そういう時に限って急いで出かけなきゃならない(笑)USB Type-Cで給電が、しかも高速で行なえるのは本当に助かります。
——CG2700Sの側面には、あわせて4つのUSB出力があります(USB 3.1 Gen 1×2、USB 2.0×2。いずれもType-A)。これらをノートPCのUSBハブとして使用できるのですね。普段、ノートPCにUSBハブで繋いでいるものはありますか?
まずはストレージですね。仕事柄、外に出がちですが、そうした時に「これこれの写真を」というご依頼が入ることがあるんです。ストレージを繋いでおくと、TeamViewerなどのリモートツールで即座に対応できるので必須ですね。 あとはカードリーダーが2台、写真用プリンター1台とテキスト用プリンター1台への接続があり、すでに足りない状態ですね。デイジーチェーンで対応はできますが、ゴチャつくのであまりやりたくはない。他にも常時接続は必要ないけど、たまに使うデバイスが幾つかあるので、1ポート空きがあるのが理想です。 そうした点でもCG2700Sは魅力的ですね。これまでのモニターにもUSBのダウンストリームはあるのですが、映像入力に加えてUSBケーブルもモニターに繋ぐ必要があった。でもCG2700SならUSB Type-Cケーブル1本で済んでしまう。測色器にポートを割かずにすむ内蔵キャリブレーションセンサーやUSB Type-Cでの給電も、USB端子の節約になっていますよね。 |
CG2700Sの側面にあるダウンストリームのUSB端子群。USB 3.1 Gen 1(Type-A)×2、USB 2.0(Type-A)×2が、ノートPCからUSBハブのように利用できる |
——CG2700Sの場合、有線LAN機能もUSB Type-C経由で利用できますが、ご利用の機会はありますか?
普段使っているノートPC(MSI Prestige 15)にはEthernetの差込口がないので、これは期待できますね。
1回の撮影量が多いうえに最近はデータサイズが大きくなってるじゃないですか。しかも写真だけでなく動画も転送する機会が増えています。我が家は無線の状態が悪くなることも間々あるため、転送速度が速く、安定して転送できる有線LANが利用できるのは助かります。
プロクオリティの表示品質+ノートPCとの高い親和性
——最後にCG2700Sの魅力と、どのような人にお勧めできるかをお願いします。
まず、これはCG2700Sに限らずColorEdge CGシリーズの魅力でもあるのでしょうが、使う側が意識せずに安定した表示を保てること。ツールというか家電的に導入するだけで良いので、煩わしさが一切ない。それでいて、プロに求められているクオリティの入り口ぐらいまでは簡単に持っていける。これは最大の魅力ですね。 その上でCG2700Sの魅力は、やはりノートPCとの親和性に尽きると思います。ノートPCに外付けモニターを接続する煩わしさをUSB Type-Cで払拭しつつ、給電や有線LANにより利便性も追求している。ですから、私のようにノートPCを頻繁に接続する人はぜひ使ってみて欲しいですね。 |
マグネットにより簡単に着脱できる遮光フードが同梱 |
人物・製品撮影:曽根原昇