ヒューマンドキュメント

商品設計・開発[機構]/植村啓太

デザインも、機能も、生産性も追い求め、
EIZOブランドの“顔”をつくる

植村 啓太  
PROFILE
●植村啓太(うえむら けいた)
モジュール&ものづくり統括部造形設計課。2014年入社。人間機械コース卒業。モットーは「細部までこだわり続けること」「妥協しないこと」。

生みの苦しみを越え、デザインを一新

植村にとって、2020年は忘れられない年になるだろう。1月、EIZOブランドの“顔”となる機構(外装や内部構成など)の設計を手がけたFlexScanの新機種「EV2760」の発売が発表されたからだ。「これまでのFlexScanシリーズでは、どちらかと言えば角ばったものや平面が多用されていましたが、EV2760は曲面を印象的にデザインした機種になります。従来のFlexScanとはまた違ったかっこよさがあります」と、本当にうれしそうな表情を浮かべる植村。その笑顔には、さまざまな部門の人たちとともにつくり上げた新機種の“生みの親”としての自覚が強く表れている。
とはいえ、設計の過程を振り返ると、苦難も少なくなかった。そもそも機構設計の仕事とは、プロダクトデザイナーから上がってきた図面を、単に3DCADに落とし込むというものではない。プラスチック部品や金属部品をいかに構成するか、基板に取り付けるUSB端子などの入出力端子の位置をどこにレイアウトするかなど、内部の状況を加味しながら、EIZOに求められる機能とデザインを両立する必要がある。加えて、実際に製造する際に用いる金型や製品の組み立ての手順など、生産性を考慮した設計も求められる。電気回路設計やソフトウェア開発、製造部門など、さまざまな部門と連携しながら、製品化に向けた道筋を描いていかなければならない。
入社から5年が経ち、機構設計の難しさは身に染みて分かっている。そんな植村にとっても、EV2760のようにデザインを一新する製品開発は初めての経験だった。「『本当にできるのだろうか』。デザイン図を初めて見た時、正直、製品化までのビジョンが見えませんでした」と植村は苦笑する。そんな段階から始まった機構設計だったが、プロダクトデザイナーと何度も何度も打ち合わせし、改善を重ねる中で、徐々にゴールが見えてきたという。「結局のところ、量産用の部品金型を発注しなければならないギリギリのタイミングまで、設計を詰めていました」と植村。親として“生みの苦しみ”を十分に味わったからこそ、実際に完成した製品を目にした時の感動は忘れられないという。

細部までこだわり、妥協しない

植村が機構設計を数多く担当してきたFlexScanは、企業でのオフィスワークはもちろん金融、文教、官公庁、医療事務などの幅広い市場で利用されるスタンダードモニターである。デザイントレンドとなるフレームレスをいち早く導入するなど、今後のブランドの指針となる新たなデザインや機能を積極的に取り入れてきた製品だ。半面、組立作業など生産しやすくするために部品点数や部品形状などの制約も少なくない。
「スタンダードモニターだからこその難しさを常に感じています。一方で、さまざまな条件の中でアイデアを凝らす日々が楽しいですね」と植村は言う。数々の経験を重ねていく中で、仕事に対する責任感とともに、やりがいもどんどん膨らんでいるようだ。
そんな彼にモットーを尋ねると、「細部までこだわり続けること」「妥協しないこと」の2つを挙げてくれた。「こだわりを捨てて、いくらでも妥協すれば、もっと簡単に製品化できると思います。しかし、そんな気持ちではそれ相応のものしかできません。どんなに細かなことでも、突き詰めていきたいんです」と言葉に力を込める植村。彼のような技術者たちの情熱が集まり、これからも新たなEIZOブランドが生み出されていくことだろう。

[この内容は 2019年12月にインタビューしたものです]

植村啓太への一問一答

Q. 学生時代に打ち込んでいたことは何ですか。
A. 小学生で始めたバスケットボールです。スポーツに熱中する中で、「物事を投げ出さずに最後までやり遂げること」「集中して取り組むこと」などが自然と身についていったように思います。
 
Q. EIZOへの入社動機を聞かせてください。
A. 大きく2つの理由があります。一つは、開発から製造までを一貫して手がけ、製品に強い自信を持っていることです。就活時に参加した説明会でEIZOの先輩社員が登場し、業務内容などを話してくれたのですが、誰もが自分の仕事に誇りを持っていることに感銘を受けました。もう一つは大学の研究室にあった共有のパソコン用のモニターが当社の製品だったことです。ブラウン管のモニターで、その当時で10年以上前の機種になるかと思いますが、まだまだ現役で活用されていることが衝撃的で、強く印象に残っています。
 
Q. どんな上司がいますか。
A. 自分自身が言葉足らずで伝わらない時などに的確にフォローしてくれたり、常に先を見据えて新しいことに挑戦したりする上司がいます。このような方が身近にいると、安心して働くことができ、チャレンジする意欲も高まります。いろいろなタイプの上司や先輩に支えられ、恵まれた職場だと感じています。