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第4回 TN?VA?IPS?──液晶パネル駆動方式の仕組みと特徴を知ろう

過去3回の「ITmedia流液晶ディスプレイ講座」でも、液晶パネルの駆動方式について軽く触れてきた。スペックにはまず表記されないが、画質や応答速度の傾向を決める重要な要素だ。 今回は、代表的な駆動方式の簡単な仕組みと特徴、及びスペックシートや店頭での見分け方を解説していこう。

  • 下記の記事は2005年10月7日に「ITmedia流液晶ディスプレイ講座I 第4回」に掲載されたものです。

駆動方式で差が出る視野角と応答速度の特性

 液晶パネルの駆動方式は、TN(Twisted Nematic)方式、VA(Virtical Alignment)方式、IPS(In-Place-Switching)方式の3種類に大別できる。 PC用の液晶ディスプレイでもっとも採用が多いのはTN方式で、VA方式、IPS方式と続く。一概には言えないが、低コストの順にTN方式→VA方式→IPS方式、PCでの静止画表示に利用するなら、 高画質の順にIPS方式→VA方式→TN方式と思ってよい。

 

 液晶パネルのごく基本的な仕組みを説明しておこう。液晶パネルは米粒のような形をした液晶分子に電圧をかけ、液晶分子の向きを変えて光の量を制御している。 ここでいう光の量とは、バックライトの光が液晶分子を超えて画面に届く量だ。バックライトの光が液晶分子ですべて遮断されれば、画面は「黒」になる。 逆に、すべて通過すれば画面は「白」だ(実際は光の漏れや拡散が生じるため、100%の遮断や通過はあり得ない)。この原理は、どの駆動方式でも共通だ。

 

 TN方式、VA方式、IPS方式という駆動方式によって異なるのは、液晶分子の配置方法と、電圧による液晶分子の動かし方だ。駆動方式の違いが大きく影響するのは、視野角と応答速度の特性である。 この2点を中心に、まずは現在の主流であるTN方式を述べてから、TN方式と比較するかたちでVA方式とIPS方式について解説していこう。

TN方式の仕組みと特徴

 図1は、TN方式の液晶分子配列を簡単に模式化したものだ。電圧がOFFのとき[(C)]は液晶分子が水平に並び、バックライトの光を通過させて画面が「白」になる。 この状態で徐々に電圧をかけていくと、液晶分子が垂直に立ち上がっていき、最大電圧になったとき[(A)]にバックライトの光を遮って画面が「黒」になる。 感覚的には、液晶分子が水平のとき(電圧オフのとき)にバックライト光を遮断するように思えるが、液晶分子を挟む偏光板と液晶分子の「ねじれ」(90度)によって、上記のような光の経路となる。

TN方式の液晶分子配列の模式図
図1:TN方式の液晶分子配列の模式図。(A)が最大電圧、(C)が電圧OFF

 

 TN方式のメリットは駆動電圧とコストが低いこと、デメリットは視野角による色変化や輝度変化が大きいことだ。 視野角については、図1の(B)を見ると分かりやすい。液晶分子の角度でバックライト光量を調整しているため、(B)のように画面を見る角度によって透過してくる光量が異なってくるからである。 つまり、色を重視する用途には向かないということだ。

 

 もう1つ、TN方式の応答速度は、一般的に立ち上がり(黒→白)が遅く、立ち下がり(白→黒)が速い。さらに、立ち上がり/立ち下がりと比較して、中間調の応答速度が急激に低下するという傾向もある。 このため最近では、中間調の応答速度を改善するオーバードライブを搭載することで、動画の表示品質を高めた製品も増えている。

VA方式の仕組みと特徴

 VA方式の液晶分子配列は、図2の通りだ。電圧がOFFのとき[(A)]は液晶分子が垂直、最大電圧のとき[(C)]は水平に並ぶ。画面の状態は、電圧OFFが「黒」、最大電圧が「白」だ。

VA方式(マルチドメイン)の液晶分子配列の模式図
図2:VA方式(マルチドメイン)の液晶分子配列の模式図。(A)が電圧OFF、(C)が最大電圧

 

 VA方式の大きな特徴は、電圧OFFのときはバックライト光が液晶分子の影響を受けず、偏光板でほぼ完全に遮断されることだ。つまり、かなり純粋な「黒」を表現でき、コントラスト比を高くしやすい。

 

 一方、視野角による輝度変化と色変化は、TN方式と同様の弱点を抱える。液晶分子の角度でバックライト光量を制御するため、見る角度によって透過してくる光量が違ってしまうからである。

 

 応答速度も、TN方式と同じ傾向だ。立ち上がり(黒→白)は遅いが、立ち下がり(白→黒)は速く、中間調では立ち上がり以上に遅くなる。 VA方式の液晶ディスプレイでも、オーバードライブ搭載で中間調の応答速度を高めた製品が登場している。

 

 VA方式の液晶パネルでは、視野角特性を改善するために、液晶分子の「配向分割技術」(マルチドメイン)を組み合わせたものが多い。 マルチドメインでは、液晶分子が垂直−水平を行き来する際に傾く方向を、範囲によって正反対にしている。簡単にいうと、範囲Aでは液晶分子が右に傾き、範囲Bでは左に傾くといった感じだ。 それぞれの範囲内だけを見ればTN方式と同じ視野角特性が存在するが、画面全体の光量を平均化することで、視野角による色変化を大幅に抑制できる。

IPS方式の仕組みと特徴

 一方、図3のIPS方式では、水平に寝かせた液晶分子を横方向に回転させることでバックライト光量を制御する。液晶分子の垂直方向の傾きが発生しないため、視野角による輝度変化/色変化が少ないのが特徴だ。

IPS方式の液晶分子配列の模式図
図3:IPS方式の液晶分子配列の模式図。(A)が電圧OFF、(C)が最大電圧

 

 仕組み的な弱点としては、コントラスト比と輝度、応答速度を高くしにくい点が挙げられる。

 

 コントラスト比に関しては、画面が「黒」のときでもバックライト光の漏れが大きいため、引き締まった「黒」が得られない。「黒」状態の輝度値が高くなるので、コントラスト比(黒と白の輝度比)も低くなってしまうのだ。 高輝度化が難しい理由は開口効率で、高速応答が難しい理由は液晶分子の回転方法だ。ただし、TN方式やVA方式と違って、階調全域で応答速度のバラつきが少ないという特徴もある。

 

 IPS方式の液晶ディスプレイは、グラフィックプロ向けや医療向けでは高いシェアを保っている。動画性能(高速応答)が求められないこれらの現場では、IPS方式の高品質な発色特性と視野角特性が高評価されているからである。

液晶ディスプレイの駆動方式を見分けるには

 現在、単独の製品として販売されているPC用液晶ディスプレイは、多くがTN方式だ。その次にVA方式が来て、IPS方式の製品は少数派となった。

 

 スペックシートで見分けるときにポイントとなるのは、視野角、最大色数(発色数)、応答速度だ。ただし法則的に適用できるわけではないので、1つの目安として考えてほしい。 理想なのは、液晶パネルの駆動方式を各ベンダーが明確にしてくれることだ。製品を購入するユーザーの利益を考えれば、仮に都合が悪い情報だとしても、きちんと公開するのがベンダーの取るべき姿勢だと思うのだが、いかがだろうか。

視野角

 垂直方向の視野角で上と下の数値が違うものは、TN方式だと思って間違いない。ただし、ここには落とし穴がある。

 

 視野角の数値は、一定以上のコントラスト比を保てる範囲(画面を見る角度の範囲)を示すものだが、この「一定以上のコントラスト比」がくせ者なのである。以前は「10:1」以上が標準的だったが、最近では「5:1」以上を視野角として示す例が多い。「10:1」だとスペック上の視野角が狭くなるため、基準を「5:1」に甘くして数値上の視野角を広くしているのだ。一定の値が何であるかを公開していないベンダーも多く、それが曖昧さに拍車をかけている。

 

 「5:1」のコントラスト比は、あくまで「画面が見える」という程度でしかない。正面から見た場合と比較した輝度変化や色変化はまったく考慮されていないのが現状だ。

最大色数

 最大色数は「1677万色」が基準となる。「1619万色」だったり、注釈として「ディザリング使用」などと書かれている場合は、ほぼ確実にTN 方式だ。ただし、TN方式でも1677万色の製品は存在するため、1677万色ならVA方式かIPS方式であるとは言い切れない。

 

 余談だが、1677万色という数字は、RGB各色8ビット階調で表現できる最大色数だ。RGBの3色が「8ビット=256階調」なので、256×256×256=16,777,216色となる。通常のPC環境では、この色数をフルカラーと呼ぶ。

 

 一方、最大色数が1619万色の製品は、RGB各色6ビット階調+FRC(Frame Rate Control)という仕組みで擬似的なフルカラーを表現する。FRCとは、異なる色の表示を高速に切り替えることで、目の錯覚を利用する技術だ(例えば、「白」と「赤」を交互に高速表示すると「ピンク」に見える)。中には、RGB各6ビット+FRCで、擬似的に1677万色を表現できる液晶パネルもある。

応答速度

 応答速度については、中間調の応答速度を改善するオーバードライブの登場によって、少しややこしくなっている。オーバードライブを搭載した製品の場合、従来通りの応答速度(黒→白→黒)と、中間調の応答速度がスペックに記されるケースが多い。しかし、オーバードライブを搭載しているにも関わらず、従来通りの応答速度しか記載していなかったり、オーバードライブ搭載とも書かれていない製品もある。あくまで現時点(2005年9月現在)の目安に過ぎないが、「黒→白→黒」又は「白→黒→白」の応答速度が12ms以下なら、TN方式と考えてよいだろう。

店頭で見分けるには

 たくさんの液晶ディスプレイを展示しているショップに足を運べる人は、駆動方式を意識して製品の画面を見てみるとよい。 注目すべきポイントは少ないが、駆動方式の違いが比較的はっきり表れるのは、上下の視野角だ。TN方式は上下の視野角で色の変化が激しいが、VA方式やIPS方式はTN方式ほどは変化しない。 これによって、TN方式かそれ以外(VA方式、IPS方式)かは判別できるだろう。

 

 一方、IPS方式の製品はかなり少なくなっている。売れ筋の17インチや19インチクラスは、軒並みTN方式かVA方式だ。 20インチ以上の上位モデルをそれなりに展示しているショップでないと、IPS方式にはお目にかかれないだろう。

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