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第2回 輝度とコントラスト比は高いほど良いのか?

ITmedia流液晶ディスプレイ講座の第2回は、「輝度」と「コントラスト比」だ。どちらも液晶ディスプレイの主要なスペックなので、それぞれの意味や最適値の目安などを知っておこう。 最近は高輝度/高コントラスト比の製品が増えているが、高ければ高いほど良いのかについても考えてみる。

  • 下記の記事は2005年7月8日に「ITmedia流液晶ディスプレイ講座I 第2回」に掲載されたものです。

輝度とコントラスト比の意味

 はじめに「輝度」と「コントラスト比」の意味を簡単にまとめておく。

 

 輝度は画面の明るさで、単位は「cd/m2」(カンデラ 毎 平方メートル)だ。数字が大きいほど画面が明るいと考えておけばよい。

 

 コントラスト比は、画面内の「白(最大輝度)」と「黒(最小輝度)」の輝度比だ。表記は「500:1」などとなり、左側の「500」が白、右側の「1」が黒を示す。

 

 ここで注意したいのは、コントラスト比はあくまで「比率」であることだ。最大輝度を高くしても、最小輝度を低くしても、コントラスト比は向上する。 例えば、最大輝度が500cd/m2で最小輝度が1cd/m2の場合と、最大輝度が250cd/m2で最小輝度が0.5cd/m2の場合、両方ともコントラスト比は「500:1」となる。

 

 ただし、画質面でどちらが有利であるとは一概には言えない。環境光や用途、好みで変わるからだ。

 

 なお、液晶ディスプレイの輝度とコントラスト比を決める要素としては、バックライトとその配置方法や、駆動方式(TN系/VA系/IPS系)、 RGBカラーフィルタ、偏光フィルタなどがある。 ただし、製品を選ぶときに考慮できるのは駆動方式くらいで、現在はTN系がもっとも多く、次にVA系、 IPS系となっている。駆動方式の詳細は省くが、構造的にコントラスト比を高くしやすいのは、VA系、TN系、IPS系の順である。

輝度とコントラスト比は高いほど良い?

 では、輝度とコントラスト比は高ければ高いほど良いのだろうか。

 

 まず輝度についてだが、高ければ良いとは限らない。輝度の高低が画面の見やすさに影響するのは事実だが、画面の見やすさは輝度以外にも、人間の目から画面までの距離、視力、環境光(周辺の明るさ)にも左右される。

 

 高輝度の長所のひとつは、明るい室内でも、遠くの位置から画面の文字やアイコンをしっかり視認できる点である。だが、PC用の液晶ディスプレイの場合は、目から画面までの距離は一般的に50センチ前後。 これくらいの距離では、ビジネスアプリケーションでも動画/静止画でも、それほどの輝度は必要なく、液晶ディスプレイを最大輝度にすると、明るすぎて目の負担が大きくなる。このため、普段は輝度を低くして使っている人も多い。

 

 ちなみに、TCO'03規格における要求輝度は150cd/m2、液晶ディスプレイのエルゴノミック基準を定めたISO13406規格では最低35cd/m2、明るい環境では100cd/m2以上が推奨されている。 sRGBの規定でも、CRTディスプレイの輝度は80cd/m2で、液晶ディスプレイもこの基準に沿っている(sRGBでは液晶ディスプレイの明確な輝度は定められていない)。 一昔前の高級17インチCRTディスプレイの輝度が100~120cd/m2程度であったことを考えると、現在の液晶ディスプレイがいかに高輝度であるかがわかるだろう。

 

 最近は高輝度を謳った液晶ディスプレイも増えているが、これは液晶テレビの影響が大きい。液晶テレビにはリビングなど比較的明るい場所での視認性が求められるため、高い輝度が必要だからだ。 液晶テレビの場合、500cd/m2クラスの輝度を持った製品が多い。

 

 PC用の液晶ディスプレイでも高輝度だと動画がきれいと言われるが、先述したように環境光と画面までの距離でかなり違ってくる。 家庭の一般的な蛍光灯の下で、画面までの距離が50センチ前後なら、最大輝度は250~300cd/m2もあれば十分だろう。

 

 続いてコントラスト比だが、基本的には高い方が良い。コントラスト比が高いと画面にメリハリがつき、くっきりはっきりした画質になる。一般的な PC用の液晶ディスプレイでは、高いコントラスト比のデメリットは特にない。 ただ、ユーザーの視覚的な問題として、コントラスト比が高いと画面がギラギラしたように感じて好きになれないという人もいるだろう。

FlexScan S170
1000:1のコントラスト比を備え、引き締まった黒と深みのある色を表示できるナナオの17インチ液晶ディスプレイ「FlexScan S170」

輝度/コントラスト比と色の階調性は関連性があるのか

 輝度とコントラスト比が色の階調性に与える影響は、製品によって異なる。

 

 輝度から述べると、液晶ディスプレイ内部のガンマカーブがしっかり調整された製品であれば、輝度を変更しても階調は保たれる。 一方、ガンマカーブがきちんと調整されていない低品質な製品の場合は、一部の階調が薄く紫を帯びたり、青めになってしまう。

 

 ガンマカーブはユーザーに見えない部分なので、購入時にチェックするのは不可能だ。筆者の経験上、低価格できれいなガンマカーブを備えた製品は皆無に近い。 あくまで目安だが、17インチSXGA液晶ディスプレイなら、国内メーカー製で実売5万円を超えるミドルクラス以上の製品が良いだろう。もちろん、細かい階調性をそれほど気にしないなら、神経質になる必要はない。

 

 コントラスト比の数字そのものは、階調性には影響しない。500:1や1000:1という範囲の中で255階調を表現するからである。

 

 ただし、液晶ディスプレイの設定項目でコントラストやRGBバランスなどを調整した場合は別だ。一般的に、コントラスト調整は入力信号のレベル調整で行うため、程度の差はともかく、基本のガンマカーブが崩れて階調性を損なう。 今現在、「コントラスト」という調整項目を設けている液晶ディスプレイが少ないのは、こうした理由が大きいと思われる。

 

 補足しておくと、コントラストを調整できる製品の階調性がひとくくりに悪いというわけではない。適度に調整できる製品もあり、最終的にはユーザーの用途と好み次第だ。

輝度はその都度調整、コントラスト比は高い製品をチョイス

 実際に製品を選ぶときは、最大輝度は250~300cd/m2以上が1つの目安となる。19インチ以上の液晶ディスプレイで、少し離れた場所から映像を見る機会が多いなら、より高輝度を謳った製品が良いだろう。

 

 コントラスト比に関しては、今後も高くなっていくのが大きな流れだ。高コントラスト比によるデメリットはないので、なるべく高い製品を選びたい。

 

 輝度についてもう少し述べておくと、調整幅の大きな製品の方が使いやすい。PCを使う時間が長かったり仕事で使う場合は、画面を暗めにした方が目の負担は少なくなるが、OSDで最低輝度に設定してもそれほど暗くならない製品もあるからである。

 

 また輝度は、用途に応じてその都度変更しながら利用した方がよい。映像や静止画の鑑賞では輝度を高くし、Webブラウザやビジネスアプリケーションでは低輝度にするのがお約束だ。 最近の液晶ディスプレイは、テキストモードやピクチャーモード、ムービーモードといったように、ワンタッチで輝度や色調を変更できる製品が多いので、うまく使い分けたい。

 

 ナナオの製品でいえば、付属ツールによる自動切り替えの「オートファインコントラスト」機能が便利だ。あらかじめアプリケーションと画面モードを登録しておくと、 そのアプリケーションが起動したときに画面モードを自動的に変更してくれる。

ScreenManager Pro for LCDの設定画面
ナナオの液晶ディスプレイ製品に付属する「ScreenManager Pro for LCD」の「オートファインコントラスト」タブ画面。 アプリケーションを起動すると、そのアプリケーションが「アプリケーションの選択」プルダウンリストに加わるので、対応させるファインコントラストモード(画面モード)を指定して登録する。 その後は、登録したアプリケーションを起動すると、対応するファインコントラストモードに自動で切り替わる

 

 次回は「応答速度」を取り上げる。最近もっとも注目されているスペックだが、数値だけでは判断できない部分も多い。業界全体に見え始めた新しい動向も気になるところだ。

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