global icon

クリエイティブワーク

ColorEdge Global Ambassador 故島 永幸氏 EIZO訪問記

ColorEdgeのものづくりに密着!ColorEdge開発者と対談

 

2021年からColorEdge Global Ambassadorを務めていただいている故島氏は、生まれ故郷の徳島県美馬市でスタジオフォトに携わる一方で、その活躍の場を世界に広げているフォトグラファーです。このたび故島氏がEIZO本社を訪問、EIZOモニターの生産現場を実際に見ていただき、さらにColorEdgeシリーズの新製品「ColorEdge CG2700X/CG2700S」の開発者と対談いただきました。

※ColorEdge Global Ambassadorとは、当社が海外市場向けに実施している企画で、世界各国において、当社のカラーマネージメントモニターColorEdgeを自身の作品づくりに不可欠なツールとして活用しているプロフェッショナルを紹介するものです。スペシャルページはこちら(EIZO海外Webサイトへ)

 


 

フォトグラファー 故島 永幸氏

30歳のときに子どもの成長の記録を残すために写真を撮り始める。40歳で脱サラ、フォトスタジオ『フォトアート・コジマ』を設立。近年は世界的なウエディング/ポートレートフォトコンペティションに挑戦し、これまでに200点以上の作品が入選している。また、故島氏は現像処理においても高い評価を得ており、世界中のフォトグラファーから依頼を受け、レタッチやプリントでの作品づくりをサポートしている。

故島氏は自身のフォトスタジオにColorEdge CS2740をマルチモニター構成で導入されています。
作品づくりおいて大切にしていることやColorEdgeの使用感について伺った導入事例を公開しています。

詳しくはこちら

 

 

石川県白山市にあるEIZOの本社は、製品の企画、開発、品質保証、生産、アフターサポートまで、ものづくりのすべての工程を備えています。EIZOは、この自社一貫体制で、世界中のユーザーに高品質な製品をお届けしています。国内外に出荷されるモニターがEIZO本社工場で日々生産されています。

このたび、故島氏がEIZO本社を訪問。普段愛用されているColorEdgeがどのようにでき上がっていくのか、その生産現場を実際に見ていただきました。

工場を併設したEIZO本社

 

製造部社員から説明を受ける故島氏

製造部社員から説明を受ける故島氏
ColorEdgeは機械による搬送や調整を自動で行う工程と、人による組立て・検査を行う工程の両方がバランスよく配置されたハイブリット生産方式を採用している。

 

<組立て工程>

<組立て工程>
モニターは人の手によって丁寧に組立てられる。組立て後のチェックにはロボットやカメラを使い、異常を確実に検出して、高品質なものづくりに貢献している。

 

<エージング・調整工程>

<エージング・調整工程>
組立て後は、一定時間モニターに電源を入れて画面表示をさせる「エージング」という工程で、初期不良の検出と共に、モニター内部の回路を安定させている。その後、専用カメラによる色の測定・調整を行っており、これらの工程はすべて自動化している。1台ごとに細やかに調整することで、個体差が少ない正確な表示のColorEdgeを世に送り出している。

 

生産の進捗を見える化した大型EIZOモニター
ColorEdgeを生産する最新の生産工程では、正確な表示が求められる医用モニターRadiForceも生産している。自動化されたラインでは、AIやIoTが導入されており、効率よく調整が行われている。調整結果を利用して、最適なアルゴリズムを導き、調整時間を短縮し、生産性向上につなげている。

 

<検査工程>
最終の検査工程では、製品1台ごとに、機械と熟練社員の目視、両方で厳しく検査。特に、低階調部の表示や製品の外観検査には、厳しいトレーニングを受けた社員が目視でチェックを行うことでEIZO品質を維持している。故島氏も目視によるチェックの様子を興味深く見学されていた。

 

故島氏からのコメント

念願叶った工場見学は感動でした。随所にものづくりの精神が活かされ、また、さまざまなシステムを自社開発し、効率的に生産されるモニター。さらに、そこで働く人の勤勉さ、プロフェッショナリズムに触れることで、信頼を勝ち取るということの重みを改めて感じました。見学を通し、ますますEIZOモニターのファンになってしまいました。コロナ禍にもかかわらず受け入れてくれた本社工場の皆さんには、改めてお礼申し上げます。

 

 

ColorEdge Global Ambassadorと対談
CG2700X/CG2700S開発者が製品づくりにかける想い

 

長年ColorEdgeをご自身の制作環境に導入されている故島氏。2022年6月と9月に発売が開始されたColorEdge CGシリーズの新製品『ColorEdge CG2700X/CG2700S』の開発者たちと対談の場を設け、故島氏がフォトグラファーを志した原点から、開発者が新製品や当社のものづくりにかける想いまで語り合っていただきました。


左から造形設計を担当する奥村 晃一、アプリケーション開発を担当する前川 孝雄、ColorEdge Global Ambassador 故島 永幸氏、ハードウェア開発を担当する河野 孝洋

 

 

故島氏がフォトグラファーになったきっかけ

河野:早速ですが(笑)、故島さんがフォトグラファーになったきっかけについて教えてください。

故島氏:結婚して30歳のときに子どもが生まれて、子どもの成長を記録しようと思って始めたのがきっかけですね。当時はもちろんフィルムでした。

せっかくならできるだけきれいに撮って残してあげたいという気持ちから、写真をもっとうまく撮れるようになろうと思って、地元の新聞社の写真コンテストに応募してみたところ、これが上手くいって何度も入賞させていただきました。ただ、しばらくすると勝つことを意識し出したことでストレスになりました。そのため、しばらく写真からは離れて、子どもの運動会といった成長の記録のためにしかカメラを持たなくなりました。

写真から離れて3年ほどたったときに、スキーに行きました。そのときたまたまカメラを持って行って、滑っている友人たちを撮影しました。その写真をプリントして皆に渡してあげたらとても喜んでくれて。それで『写真ってこれでいいじゃないか!誰かひとりでも喜んでくれるのであればとても価値のあることじゃないか』と思い、そこからまた写真を始めました。

ちょうどそのときにキヤノンのデジタルカメラを購入し、デジタルの進化を実感しました。それを起点に、デジタルに完全シフトしました。写真をまた撮り始めて、知人のご子息の結婚式を撮影させていただきました。するとクチコミで、他からも撮影の依頼を受けるようになり、40歳のときに、写真で食べていきたいと思い脱サラしました。これがきっかけです。
 

 

撮影でのこだわり

河野:作品を何点か拝見したのですが、フレームの切り方というのでしょうか、独特というか、他の方と違うなと感じます。写真の中にフレームが何本もあるような、そういう印象を受けました。

故島氏:あまりこれといって意識はしていないのですが、建築がものすごく好きなんですよ。アートという観点で見た建築に大変興味があり、それが多少影響しているのかもしれないですね。
 


河野:写真は露光を測りながら撮影されるのですか?

故島氏:フィルム時代からスポット測光しか使ったことがないですね。当然マニュアルで、カメラのオート機能は一切使ったことはないです。フィルム時代はリバーサルフィルムを使っていたので、フィルム代がけっこう高かったんですよ。そしてフィルム現像するときのダイレクトプリントも高かったので、絶対にシャッターの失敗はしたくなかったんです。だから常にスポット測光で適正露出を読むという風にしていました。デジタルカメラになった今でも同じです。

河野:スポット測光だと、全体からすると飽和する部分が出てきてしまうのではないでしょうか。

故島氏:それが逆にいいんです。ハイライトを飛ばしたくないので、ハイライトの露出を測ってシャドウは起こしています。
 

正しい環境で制作することの重要性

故島氏:ColorEdgeは幅広い分野の人に使われていると思いますが、正しい制作環境で使えていないこともまだまだあると思います。その辺はどうお考えですか?

河野:色がずれてしまわないように、外光が入ってこない環境に整えたり、高演色照明を使って環境光を整えたりなど、適切な環境で使っていただきたいという思いが当社としてはあります。

故島氏:写真業界全体でもっと啓蒙していけば、色が合わないといった問題はなくなっていくと思います。それは私たちが継続して取り組んでいくべきことだと思っています。

また、私はおすすめのモニターを聞かれた際、多くのアルバムメーカーや現像所ではColorEdgeを使っているので、ColorEdgeを使う方が同じ色で見ることができる可能性が高いと思いますよ、と伝えています。

河野:間違いのない色のコミュニケーションを取っていくためには、制作フローにいる全員のモニターや表示モードといった前提が同じ状態であること、そして同じ基準でモニターが調整されている状態でないと、やはり難しい部分がありますね。
 

新製品ColorEdge CG2700X/CG2700Sについて

故島氏:新製品CG2700X/CG2700Sの新機能や、こだわりのポイントは何ですか?

河野:一番こだわっているところはもちろん画質です。この2、3年はコロナの影響で部品が思うように入ってこない状況もあり、とても苦労しながら作ったので、かなり思い入れ深いモデルですね。

本モデルは機能的な面が向上しており、近年、制作環境がデスクトップベースからノートPCへと変わりつつある状況の中で、USB Type-Cケーブル一本で映像表示、USB信号の伝送、給電まででき、さらにUSBポートを複数搭載しているので、マウスやキーボードをモニターに接続していただければ、ノートPCをデスクトップPCのように使っていただけます。加えて、ColorEdgeでは初めてLANポートを搭載し、PCとモニターをUSB Type-Cケーブル一本で接続するだけで安定したネットワーク環境を整えることができます。

一番の特長はUSB Type-Cで接続した際にPCに供給できる電源容量を増やしたところです。これまでUSB Type-Cを搭載したColorEdgeは60Wまでの給電が最大でしたが、CG2700Xは94W、CG2700Sは92Wまで給電が可能になりました。ただ、電源容量を増やしたことで熱がモニター内にこもるという問題がありました。熱がこもると画面の品位に影響を与えるため、放熱のためのファンを付けなければならなくなります。しかしながら、ファンの音はユーザーにとってノイズになります。そこを両立するために、放熱の設計にかなり苦労してファンレス化を実現したモデルです。試行錯誤した結果、モニター筐体の新しいデザインにたどり着きました。


故島氏:このモニター背面のパンチングメタルがそれにあたるということですね。かっこいいなと思いました。私が使っているCS2740は60Wまでの給電に対応していますが、CG2700X/CG2700Sは90Wを超える給電性能とのことなので、重い作業をするにも安心ですね。

河野:放熱のために筐体に穴を開ける必要がありましたが、穴を開けるとそれはそれで見た目としてノイズになるので、難しかったです。

故島氏:モニターの背面まで見る人は少ないかなとは思いますが、作り手のこだわりですね。
 


奥村:テレビの場合、壁際に置かれて背面が見えないことがほとんどだと思いますが、モニターの設置環境では、背面を目にする機会も多いので、背面のデザインにもこだわりをもっています。最初はプラスチック製の外装を検討していましたが見た目が悪かったため、微細な穴を開けられるパンチングメタルで放熱できないかと構想しました。試作に至るまでにも、穴の大きさ、数、面積はどれくらいが適切かを何度もシミュレーションしています。

故島氏:表示に関しては何か変わったところはありますか?

河野:表示については今までのColorEdgeの性能・機能をしっかり引き継いでいます。HDR表示対応に関しては、これまでの機種ではHDMI入力のみ対応だったところを、今機種からはDisplayPortとUSB Type-Cも対応になりました。ColorEdgeはこれまで約20年間、皆様のご要望を受けて進化し続けてきたので、基本性能に関しては飛躍的に進化することはなかなか難しいです。むしろ性能を「維持する」ことが難しいのです。

故島氏:そうなのですね!パネルや基板などを従来製品と同等のレベルに維持することが難しいということでしょうか。

河野:そうですね。製品ごとにそれぞれパネルが異なり、特性も違います。常に同じ品位を保って作るということは、実はかなりハードルが高いことです。

故島氏:パネルも自社開発・生産しよう、とはならないのでしょうか。

河野:当社はColorEdgeだけでなく、ビジネス向けのモニターや医用、産業用途などそれぞれ求められる機能や性能が異なるモニターを多数生産しているので、すべての用途のパネルを自社で作るというのは現実的ではないと思います。それらすべてのパネルを生産するための工場の維持コストなどを考えると難しいですね。自社開発・生産しない利点としては、その時々で用途にあった最良のパネルを広く選択できることだと考えます。

故島氏:ColorEdgeが100万円とかになってしまったら困るのでやめておきましょう(笑)

河野:今後もパネルメーカーと連携して、求められる性能を発揮できるパネルを採用していきます。
 

 

内蔵センサーのこだわり

故島氏:前から聞きたかったことがあります。私は長年i1 Proシリーズのセンサーを使っておりまして、現在モニターはセンサー非搭載のCSシリーズのCS2740を使っています。CGシリーズに内蔵されているセンサーはフィルター式ですが、i1 Proシリーズ等の分光測色計に比べた測定精度はどうなのでしょうか?

河野:ColorEdge CGシリーズに内蔵しているセンサーは、色ずれなどが起きない素材をかなり慎重に選んでいて、保存試験などを行いながらずれないことを確認した素材だけを使っています。

故島氏:少し前までのセンサーは、環境にも寄りますがフィルターの劣化で使用期限が3~5年ということをメーカーさんから伺いましたので、ColorEdgeの内蔵センサーについてはどうなのかというところを知りたいです。経年劣化に関しては、無視していいということでしょうか?

河野:そうですね。センサー自身がものさしであるという考え方をしていますので、ものさしがずれてしまうようなセンサーは使えないという思想のもとにセンサーの素材を選んでいます。製品に標準で5年保証を付与しているので、センサーに関してもその保証に含まれます。ただ経年変化しないということはないので、そこはご留意いただきたいです。

2021年、当社はカラーマネージメントモニター「ColorEdge CGシリーズ」の企画・開発において、アカデミー賞の一部門である「アカデミー科学技術賞」を受賞しました。
受賞においては、審査員から、キャリブレーションセンサーをモニター筐体に内蔵し、自動でキャリブレーションが可能なこと、画面表示の輝度・色度ムラを抑え、表示均一化を図るデジタルユニフォミティ補正回路を搭載していることなど、映画業界への技術貢献が評価されました。

アカデミー科学技術賞受賞スペシャルページはこちら

 

前川:ColorNavigatorにはコレレーション機能というものがあります。内蔵センサーの測定値の特性を他のセンサーに合わせることができるというものです。内蔵センサーをColorEdgeに搭載し始めた頃のセンサーは、現在のものよりも経年変化量が大きかったことや、フィルター式だからすぐ色が変わるんだろうと言われることも多く、それを解消するために開発した機能でした。

特に映画業界ではリファレンスセンサーの特性に合わせて使いたいという意見が多くありました。例えば、半年くらいであればそこまで変異はしないので、基準としたいリファレンスセンサーの特性をColorEdgeの内蔵センサーに覚えさせて、半年間は効率よく内蔵センサーで自動でキャリブレーションを実施、半年後にまた内蔵センサーをコレレーションする、というような運用を意図しています。これによって経年変化を吸収するような仕組みを構成することができるようになりました。また、CGシリーズの内蔵センサーは、工場での出荷前にCA-410やCS2000といった産業レベルの測定器に特性を合わせていますので、非常に精度の高い調整が可能です。

河野:センサーの測定値がずれて苦労されたことはありますか?

故島氏:ありますね。ある日キャリブレーションをしたときにグレーがかなり赤みがかっていて、もう一度キャリブレーションするといつもと同じような表示になる、という現象が続いたことがあり、どうしてだろうと思っていました。御社の開発の方にセンサーの型によってColorNavigatorとの間に問題が起こることを発見していただき、現在はセンサーを新しいものに買い替えましたので、その問題は起こっていません。

原因が分からないともやもやしますよね。他にも、キャリブレーション結果がおかしかったため、センサーを校正に出したが改善せず、USBケーブルを変えてみたところ直ったなんてこともありました。

河野:ColorEdgeと外付けセンサーを使う際には、切り分けの問題があります。センサーをモニターに内蔵しようと決めたのもセンサーに関する問題が散発したことが理由でした。プロ向けの高品位なセンサーを使って色が合わないケースと、リーズナブルなセンサーを使っていて合わないケースでは、それぞれ状況が違うので、同じ色ずれでも原因がまったく異なることも多くありました。この問題に悩まされて、それだったら工場でしっかりと調整したセンサーを内蔵し、一定期間で自動的にキャリブレーションすることで安定した品位を保てるようにしようとなり、センサーを内蔵したColorEdgeが誕生しました。
 


 

故島氏:実際に、外付けセンサーを持っているが、センサー内蔵のCGシリーズを購入したという方が、仕事をしていない時間に自動でキャリブレーションをしてくれるので、自分の手を煩わせることがなくなり非常によいと言っているのを聞いたことがあります。

河野:ユーザーがタスクに集中できるようにという思いから、なるべくノイズを減らしたいというコンセプトを掲げて、モニターを開発しています。キャリブレーションは表示を正しく保つために必要な作業ではあるけれども、本来のタスクに集中してもらいたい。内蔵センサーを搭載することで負荷をなるべく軽減できればと思っています。

故島氏:PCやモニターだけでなく、周辺機器を近くに置いて使うという方も多いと思うのですが、何か気をつけることはありますか?

河野:外部ノイズの影響でパネルの品位が悪くなるかという観点では、外部ノイズに対する試験を行って問題ないことを確認していますので、特に心配する必要はありません。
 

万人に受け入れられるものを作る難しさ

奥村:私はEIZO製品のデザイン関係全般を担当しています。製品のプロダクトデザインを始めとして、ソフトウェア/アプリケーションのUIを外部のデザイン会社と協力しながら制作しています。さまざまな用途の製品を担当していますが、やはりColorEdgeはクリエイターが使う製品なので特に気合いが入りますね。

故島氏:ColorEdge専用のキャリブレーションソフトウェアが数年前に新しい「ColorNavigator 7」となり使いにくくなった、というユーザーの声を聞いたことがあります。ソフトウェアの機能だけでなく、UIが変わっただけで使いにくくなったと感じるユーザーもいるので、デザインとはそういう面で難しいですよね。

奥村:さまざまな制約がある中ですべての人にとって使いやすいものを作ることを日々目指しているのですが、やはり、万人に受け入れられるものを作るのはなかなか難しいですね。

故島氏: UIがずっと変わらなければ、誰でも使い続けることができる。そういうものを作ることができれば一番の理想ですよね。

奥村:普遍的なプラットフォームができ上がっている方が、ユーザーも迷わずに使うことができるはずなのできっと良いですよね。

故島氏:でもこうやって使う側は好き勝手言えますけど、作る方は大変ですよね(笑)
 


河野:写真家、デザイナー、映像制作者など、ユーザーによってそれぞれ使い方が異なる中で、どのようにしてすべてのユーザーにとって分かりやすいアプローチができるかを考えた結果、新しくColorNavigator 7を開発したという経緯があります。その一方で、前のソフトウェアに慣れ親しんでいたユーザーの方にとっては、UIのデザインが変わったことで戸惑わせてしまった部分もあったと思います。

前川:先ほどの使いにくくなったというユーザーのご意見もすごくよく分かります。というのも、ColorNavigator 7は2つの旧ソフトウェア「ColorNavigator 6」と「ColorNavigator NX」の機能を1つにまとめたもので、UIを変えざるを得ませんでした。既存のユーザーにとっては、使い勝手が変わってしまい慣れるまでは使いづらいところはどうしてもあったと思います。しかし、機能が異なる2つのソフトウェアを提供するよりも、1つのソフトウェアで2つのソフトウェアの機能を使えるものを作った方が将来的に良いと考え、苦渋の決断ではありましたがColorNavigator 7を開発しました。
 

今後作りたいColorEdge

故島氏:今後作っていきたい製品などありましたら教えていただけますでしょうか?

河野:私自身会社に入ってやりたかったことが、ユーザーに喜んでもらえる製品を作りたい、ということでした。作っていきたいものとしては、意図した通りに制作物を創り出せる環境づくりをお手伝いできるような製品を作りたいと常々思っています。

前川:今ColorEdgeはハードウェア・キャリブレーションができるモニターとして売っているのですが、ユーザーさんは実際キャリブレーションがしたくて購入しているわけではないと思います。キャリブレーションをせずとも、きちんとした正確な色表示が保たれるのであればそれが理想ですから。究極的にColorEdgeが目指すところは、キャリブレーションをせずとも、モニターを買ってきてそのまま使えば、思った通りの色が出るというところだと思っています。

ソフトウェアとしては、できるだけ使うことを意識をしなくてよいつくりに、キャリブレーションをするにしてもその回数を減らす、また手順を一手でも二手でもでも減らすことを目指しています。正しい色表示は保たれているけれども、そのための作業を意識しなくてもよいという、そういうものを作ることを目指しています。

故島氏:ソフトウェアで何か上手くアプローチできるといいですね。せっかくソフトウェアが用意されていてもモニターを買ってから一度も調整しない人もいますしね。また、調整しようとしたけど手順が分からない、という人もいます。例えば、写真をプリントするのであれば色温度は5000ケルビンで使いましょう、という話になるのが普通かと思うのですが、5000ケルビンで使っている人って意外と少ない。5000ケルビンにすると黄色く見えるという方もいるので、正しい情報をもっと分かりやすく伝える方法があればいいんですけどね。

前川:そうですね。対象ユーザーが増えたことでUI側にもたくさん選択肢が増え、そうすると自分はどれを選べばいいのかとなるのだと思います。
 


故島氏:良いモニターを買ったのだから買ったときの状態で使うのがいいに違いないと思って使用される方も少なくはないですしね。モニターの調整は一切しないで、最新のノートPCの色表示を見て、最近のノートPCはすごい色が良くてプリントとも色が合って素晴らしいという話を聞いたことがありますが、そんなはずないだろうと思います。

前川:カラーマネージメントの知識があまりない人でも、自動でその人向けの表示状態になるようなものが作れれば最高なのですがね。

故島氏:業界自体が啓発する必要がありますよね。

前川:我々からの情報出しが十分でないことや、Webで案内してもわざわざ見に行かないといけないという手間があるので、情報がうまく伝わらないことがあります。それをソフトウェア上で上手く伝えるようにするUIを工夫する必要がありますね。

故島氏:ソフトウェア上で「あなたはフォトグラファーですか」といったいくつかの質問に答えるだけで、自動的に最適な表示モードに調整してくれるととても使いやすくなると思います。

前川:いいアイデアですね!カラーマネージメントに詳しいに越したことはないのですが、やはり本業の制作に集中していただくための環境を上手く整えていきたいなという思いでやっています。

奥村:デザインに携わる中で、デザインとは何ですかと聞かれることがあります。その時の答えは決まっていて、すごく平易な言葉なんですけれども「人を幸せにするものです」と答えています。これが私の信念です。

故島氏:私も、アートとはなにかという質問に対して、「人の幸福を願って生み出されたもの」と答えているんです。近いですね。歴史的な背景を検証している中でこの答えにたどり着きました。

奥村:ちゃんとデザインされたものは、使っていて気持ちがいいし、なぜだか理由は分からなくても幸せな気分になります。使い続けてもらうことで、人はちょっとしたことで幸せになったり豊かになったりすると思うんですよね。

こういう想いがあるので、今後も、すごく突飛なもの、単にかっこいいものというよりも、使う人に寄り添ってきちんとデザインされたもので、使った人が少しでも豊かになるものを地道に作り上げていきたいと思っています。

 

故島氏 スペシャルインタビュー動画

 

 

CG2700X / CG2700Sスペシャルページはこちら

  • facebookアイコン
  • Xアイコン
  • youtubeアイコン
  • Instagramアイコン
  • rssアイコン