

写真家別所 隆弘氏
別所氏は、滋賀県在住のプロフォトグラファー/アメリカ文学研究者。ダイナミックに風景を切取る撮影スタイルでNational Geographic Nature Photographer of the Year 2017 “Aerials”2位やニッコールフォトコンテストなど、国内外の写真賞を多数受賞。一方で、心を動かす写真の撮り方や作品づくりについて、雑誌やWebメディアでの執筆活動も積極的に行っています。自然風景を極めた別所氏の目に映る、CS2740の使用感とは。おすすめポイントを詳しく伺いました。
Q1.
CS2740を使用した印象を
教えてください。
27型4Kでハードウェアキャリブレーションができるモニターが20万円を切って登場と聞いたとき、「いよいよ来たな」と思いました。
というのも、これまでプロにとっては必要不可欠だったキャリブレーションを正しく行えるモニターが、ハイアマや一般の人々にも手の届く価格で、しかも27型というサイズ感やUSB Type-Cケーブル1本だけで接続できる「お手軽さ」も加わって、ついに登場したからです。
これはゲームチェンジャーになる予感がします。
と言いながら、僕自身は2年ほど前まで、あまりモニターにそこまで強い意識を向けたことがなかったんです。その「必要性」に気づくことができない、特異な経歴を経て写真家になったからです。
僕は現在、一応プロの写真家ということになっていますが、元々は写真など何も関係ない、大学の文学研究という文字だけの世界を生きてきました。プロ用のモニターどころか、カメラさえまともに触ったことがなかったのですが、7年前、ひょんなことからフルサイズのカメラを購入して、人生がガラッと変わりました。いくつかの幸運を経てプロになり、現在文学研究者とのパラレルジョブの日々を生きています。
ただ、このような経緯のため比較的写真歴の浅い僕にとっては、写真はデジタルが「当たり前」でした。また、写真を見る媒体もウェブやスマホ、特にiPhoneやiMacなどの電子デバイスが中心で、そのことに特に不都合は感じませんでした。というのは、世界には多種多様な視聴デバイスがある中で、おそらく日本において最もマスを占めるデバイスはiPhoneだからです。なのでプロになってからもiMacやiPhoneを基本に据えて出力することが多かったのです。一番多くの人が見ているデバイスに合わせるのが良いと考えたんですね。
ですが、ある時、「これはまずい」と感じたのは、2年前、初めての個展を開いたときのことでした。本格的な展示用の印刷をプリントラボにお願いするとき、自分が「完成!」と思って出したファイルと出てきたプリントの色校の微妙な違いに愕然としました。
特にそれは桜が主題の展示だったこともあって、色彩の精妙さが必要な展示でした。このとき僕は、プリントまで視野に入れた場合、正確な色を表示できるモニターは、少なくとも1台は必要だと、初めて強く感じたのです。
それまではiMacで、印刷工房や各出版用のプロファイルを準備して凌いできましたが、これはいわば「正確な基準」が無いままに場当たり的な対症療法で凌いでいるだけだと痛感したのです。
そこに来ての、このEIZOのColorEdge CS2740の登場、冒頭に書いたように「いよいよ来た」と感じたというわけです。「来た」のは勿論、「ハードウェア・キャリブレーションが可能な、極めて取り回しがよいUSB Type-C接続できる高性能なモニターが”写真家の標準デバイス”になる時代が来た」ということです。モニターの世界にゲームチェンジャーが遂に来ました。
CS2740で実際にiMacと並べて現像をすると、その出力の違いに驚きます。どちらも極めて高精細なモニターではあるのですが、何よりもしっかりキャリブレーションされたCS2740の色彩感は、iMacの高コントラストな出力に比して、光が本来持っている「あたたかさ」をより上手く表現できているように感じます。
また、僕は夏には花火、冬には都市夜景のような、夜の写真も多いのですが、そのときに気になるのは黒い部分の階調です。コントラストの強いiMacでは潰れたように見えていた部分も、CS2740で見るとギリギリ階調が残っていたことがわかったりします。このような「高精度な光の再現」は、写真家に計り知れない恩恵をもたらします。
Q2.
作品づくりを楽しむ皆様に
お勧めのポイントを
教えてください。
常々周囲の若い写真家に、「写真の現像で一番大事なのは、質のいいモニターだよ」と、この数年言っておりました。ただ、実際に高精細なモニターを手に入れようと思っても、PC本体自体にもお金が必要ということもあって、これまではiMac程度しか選択肢がなかったのが実情です。
しかしCS2740の登場によって、強力なオプションが考えられるようになりました。本体はMac miniのような拡張性の高いものや、あるいはリモートとしても使えるMacBook Proなどを使いつつ、USB Type-C 1本でCS2740とつないでしまうことで、ハードウェア・キャリブレーションまで可能な高度な出力環境が整います。この手軽さこそ、物事をガラッと変えてしまう原動力です!
そしてCS2740にはなんと5年間保証までついているので、最短でも5年間、たとえPC本体が変わっても、写真の現像環境で最も大事な「モニターの見え方」は維持されます。その強力な安定性は、プロには何より必要な部分です。
CS2740、すごいモニターが出てきてしまいました。いよいよ僕も古い壊れかけのセカンドモニターはお役御免にして、この「ゲームチェンジャー」をメインに使い始める時期が来たように感じています。