ホッキョクグマ

ホッキョクグマ

カナダ・ハドソン湾

二十代の終わり、野生動物の写真を撮って生きて行こうと決めた。
そのとき、初めて取り組んだ被写体がホッキョクグマだった。
雪と氷に覆われた極寒の地で暮らす生き物。
僕らからすればあまりに厳しい環境で、彼らはどのようにして生きているのだろう。
不思議でならなかった。
思いを巡らせているうちに、いてもたってもいられなくなり、僕はホッキョクグマに会いに行くことを決意した。
海の氷が溶ける夏の間は陸地で過ごしていたホッキョクグマが、 晩秋になると集まって来る場所がある。
カナダの東側、ぽっかりと大きな口を開けたハドソン湾の西岸に位置するチャーチル岬。
ここはこの地域で最も早く海が凍る。
そのため、一刻も早く氷上でアザラシ狩りをしたいクマたちが集まって来るのだ。
僕は海が凍りクマたちが旅立つまでの約一ヶ月を、この地で過ごした。
気温は氷点下30度以下にまで冷え込み、 あらゆるものが凍りつく世界。
それでも、クマたちはそんな寒さをものともせず、生き生きとしている。
仲間同士でじゃれ合い、 遊び半分の喧嘩をしたり、雪の上を転がって楽しんだり。
親子もたくさんいる。
まだ寒さに弱い子グマは、休むときや眠るとき、母グマに包まれるようにして守られている。
その愛情深い姿は、まるで僕たち人間と変わらない。
ホッキョクグマにとって安住の地である雪と氷の世界は、気候変動で減少し続けている。
彼らの未来をつなげるのは、僕らの意識と行動にかかっている。

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