EIZOのIPソリューションを活用し、港湾クレーンの遠隔操作における安全性を向上
鈴与株式会社は1801年の創業以来、総合物流会社として国内外でさまざまな物流事業を展開しています。同社は、清水港の新興津コンテナターミナルにおいて、2020年から遠隔操作RTG※の導入計画を進めています。
この遠隔制御・操作システムと連携し、作業の安全性をさらに高めることを目的に、EIZOの「IPデコーディングボックス」「IPモニター」「21.5型タッチパネルモニター」が採用されました。遠隔操作RTGへの取組み、当社ソリューションの導入経緯と効果についてご担当者に伺いました。
鈴与株式会社 コンテナターミナル部 大庭 正守 氏 |
※ RTG (Rubber Tired Gantry craneの略):タイヤ式門型クレーン。コンテナヤードとトレーラーとの間でコンテナの受け渡しを行う荷役機器。
貴社が導入している遠隔操作RTGについて教えてください。
当社ではオペレータの負担軽減、作業環境改善、ひいてはコンテナターミナル全体の生産性向上を目的に、2022年から株式会社三井E&Sが開発・提供する遠隔操作RTGの導入を進めています。コンテナターミナルでは1日あたり2000本以上のコンテナを取り扱っています。これまで荷役作業はオペレータがRTGの高所にある操縦席に乗り込んで行っていました。
遠隔操作RTGは、ターミナル内にある管理棟に設置された遠隔操作卓から制御・操作が可能です。管理棟と遠隔操作RTGは無線通信によって接続され、荷役作業中は遠隔操作RTGに取付けた複数のカメラ映像が操作卓のモニターに一覧表示されます。EIZOのIPソリューションは、このシステムを補助する目的で採用しました。また、オペレータが設定変更や表示映像の切替えを行うサブ画面には、EIZOの21.5型タッチパネルモニターを活用しています。
これまでのRTG操作環境
遠隔操作RTGの操作環境
・図のご提供 株式会社三井E&S様
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今回、EIZOのIPソリューションを導入した理由を教えてください。
当社では遠隔操作の有無にかかわらず、コンテナターミナルでの事故を未然に防ぐことを目標に取組みを続けています。今回は、既存の遠隔操作システムとは別に遠隔操作RTGの足元を映すカメラと、その映像を確認するための機材を導入し、遠隔操作中に確認できる範囲を増やすことで安全性をより高めようと考えました。
そこで課題になったのが、「カメラ映像が増えることによる通信負荷の増加」と、「既存の遠隔操作システムとの連動」の2点ですが、EIZOのIPソリューションを導入することで、これらの課題を見事に解決できました。
導入製品
23型IPモニター
IPカメラをLAN・ハブを介して直接接続し、複数のカメラ映像を一覧表示できるモニター。27型もラインナップ。 |
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IPデコーディングボックス
IPカメラをLAN・ハブを介して直接接続し、HDMIで接続したモニターにカメラ映像を表示できる。また、ネットワーク上に映像を再配信できるストリーミングゲートウェイ機能※を搭載。 |
2つの課題について、詳しく教えてください。
課題 ①
カメラ映像が増えることによる通信負荷の増加
今回の導入では、既存の遠隔操作システムのネットワーク上にIPカメラなどの機材を追加しました。しかし、通信量が増えることで遠隔操作システムに悪影響が出ることは避けなければいけません。そのため、少ない通信量で高品質な映像を安定して伝送するという、一見相反する要件をクリアする必要がありました。
EIZOからのご提案内容:DX0212-IPのストリーミングゲートウェイ機能
IPデコーディングボックス「DX0212-IP」のストリーミングゲートウェイ機能は、複数カメラの映像ストリームを集約し1つのストリームとして再配信する機能です。その再配信された映像はIPモニター「FDF2312W-IP」で受信して表示することができます。
今回の事例では、各遠隔操作RTGに設置された4台のIPカメラ映像をDX0212-IPが1つに合成して大幅に通信量を減らし、無線通信で映像を伝送しています。また、映像合成と同じタイミングで、映像の送信方式を安定性の高いSRTプロトコルにトランスコードしています。無線通信かつ移動体であるRTGからの伝送でも、低遅延で安定した映像表示を実現しました。
鈴与様で運用中のDX0212-IP 1台の通信量を確認したところ、DX0212-IPが受信した4台のカメラ映像の通信量は2.63Mbit/sで、1つの映像に合成して再配信(送信)した通信量は1.37Mbit/sでした。通信量を約半分に削減できていることが分かります。
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ストリーミングゲートウェイ機能について詳しくはこちら
課題 ②
既存の遠隔操作システムとの連動
機器の追加がオペレータの操作量増加につながることは避けたく、遠隔操作を制御する既存システムとの連動も要件としました。そこで、荷役作業が始まり、既存システムの遠隔操作が開始したタイミングで、追加したIPカメラ映像も表示され、作業終了の30秒後に自動的に映像が止まるシステムを構築したいと考えました。
EIZOのIPソリューションは、Web APIを利用した外部制御が可能です。今回の事例では遠隔操作RTGを開発する三井E&S様にもご協力いただき、既存の遠隔操作システムからIPモニターの表示内容を制御する構成を実現しました。これにより、遠隔操作が開始するタイミングで連動して適切な映像がIPモニターに表示され、作業が終了し待機状態に移行すると自動的に映像が非表示になります。
システム構成 概略図
導入までの当社対応に感じられたことや導入の決め手について教えてください。
2023年8月にEIZOに相談してから、8か月ほどの短い期間でシステム構築を実現できたことを高く評価しています。EIZO社の開発チームには計2回現地検証を実施いただきました。1回目の検証で方針を定め、2回目の検証で導入に向けた具体的な確認をスムーズに行い、安心して導入まで進めることができました。
IPモニターとIPデコーディングボックスはPCレスでシステム構築ができ、設置が容易であることも大きなメリットだと思います。UIは非常にわかりやすく、マウスで簡単に操作できる点も製品としての完成度の高さを感じます。また、先述した2つの課題を解決する提案力は素晴らしかったです。
遠隔操作RTGでは同僚とコミュニケーションを取りながら操作が可能
タッチパネルモニターは、遠隔操作RTGの試験導入を開始した2022年から継続して活用しています。遠隔操作中に機器が故障すると、作業が止まるだけでなく事故の原因にもなり得ます。EIZOのタッチパネルモニターは国内生産かつ3年間保証もあるので、安心できますね。 |
貴社展望や、当社に期待することを教えてください。
遠隔操作RTGの導入は2025年まで続くプロジェクトです。まずはこのプロジェクトを完遂し、安全かつ効率的に荷役作業ができるコンテナターミナルを目指していきます。このような環境において、会社全体として映像を活用してDXを推進する場面は増えてくると思います。EIZOの高い技術をもって、さらなる課題解決ができることに期待しています。
■ご協力
鈴与株式会社
ホームページ:https://www.suzuyo.co.jp/
株式会社三井E&S
ホームページ:https://www.mes.co.jp/
導入製品
- IPデコーディングボックス DX0212-IP
- 23型IPモニター FDF2312W-IP
- 21.5型タッチパネルモニター FDF2182WT