Introduction

3DCGと2Dを融合させ、独自の世界観を描くイラストレーターのredjuiceさん。PC機器への豊富な知識と、制作スタイルへのこだわりを持つ彼が今回手にしたのは、ドッキングステーション機能を搭載し、HDRにも対応した27型4Kカラーマネージメントモニターの「ColorEdge CG2700X」です。redjuiceさんはEIZOの新たなHDR対応モニターを通して何を描き、何を未来に見据えているでしょうか?

redjuice
illustrator

イラストレーター。1976年生まれ。高知県出身。元機械技術者(冷凍設備設計)。
コンピューターを駆使し、既存の枠にとらわれない表現が、国内外を問わず高い評価を得ている。

代表作
  • ギルティクラウン(TVアニメ):キャラクター原案、イラスト
  • Project Itoh「屍者の帝国」「ハーモニー」(アニメ映画):キャラクター原案、イラスト
  • BEATLESS(TVアニメ):キャラクター原案、イラスト
  • ホロライブEN(Vtuber):キャラクターデザイン、イラスト(IRys)

Episode 01

First impression

“物欲”から始まった、EIZOとの付き合い
redjuiceさん愛用のColorEdge CS270(左)とColorEdge CG2700X(右)

私が元々目指していた職種は3DCGクリエイターでした。その当時に制作環境を整える過程で購入したのが、“CG制作のスタンダード”として雑誌によく取上げられていたNANAOブランドのCRTモニターです。

※NANAOブランドは1996年に現在のEIZOブランドへ統合

プロ及びプロを目指すクリエイターはEIZOモニターを使うべきというイメージもあり、性能云々以上に単に憧れの品が欲しい、要するに物欲での選択でしたね。

以降、他のメーカーのモニターを使ったこともありましたが、明らかに色の再現性や画像表示の忠実性などに違いを感じました。私の経験からEIZO ColorEdge シリーズ抜きではー貫性のあるカラーマネージメント環境を整えるのは容易ではないと感じます。そのため、イラストを描き始めてから現在に至るまで、EIZOのモニター(ColorEdgeシリーズ誕生からはColorEdge)を信頼して使い続けています。

期待と不安が入り混じる中、目をつけた「HDR」

この十数年、コンピュータの進歩とともに、デジタルアートは大きく変化してきました。また、AI技術が近年急速に発達し、さまざまな分野で人間の代替え、または人間を超える能力を獲得しつつあります。私は、技術の進歩による環境の変化は基本的に歓迎で、むしろ期待する気持ちが強いのですが、同時にイラストレーターとして今と同じことを続けていけるかどうか不安を感じてしまうことも事実です。特に最近話題の”AIが描くイラスト”などは、イラストレーターの仕事に大きく影響を及ぼすことは避けられないと感じていて、AI技術といかにうまく付き合っていけるか、作品をどのように進化させていくかということは常に考えています。

※画像生成AIサービスを用いて生成されたイラストのこと。ユーザーがイメージする画像の内容をAIにキーワードで指示することで、AIがそのイメージに沿う画像を自動で生成する。

そんな中で目をつけていたのがHDR(High Dynamic Range)です。IMAXシアターや一部のインターネット配信で徐々に浸透してきた表示技術ですが、映像制作のワークフローがある程度確立されている反面、イラストレーション、静止画アートに取込むにはどうすればよいか、ほとんどわかっていませんでした。HDR作品の制作に必要な機材を調べていく中で、HDR対応モニターが必須であることはわかっていたので、EIZOから「ColorEdge CG2700X」のレビューの話をいただいたことは、まさに渡りに船でした。

CG2700XをまずはSDR(Standard Dynamic Range)、従来通りのイラスト制作環境に導入してみました。既に2015年発売のColorEdge CS270 を愛用しており、それに CG2700X を横に並べた状態での運用になります。CG2700Xは従来機を上回る高輝度でありながら、ColorEdge専用のカラーマネージメントソフトウェア ColorNavigator 7による一貫した色管理によって、従来の環境から逸脱しない、良い意味でまったく変化のない表示を保つことができました。これは印刷やデザインでは非常に重要で、色温度や色空間を厳密に管理できることはカラーマネージメントモニターとして必須の能力です。

デザイン面では、一新された筐体の外観と遮光フードによってより画面の中に没入して作業ができるという印象です。あとは、内蔵のキャリブレーションセンサーが自動で出てくるギミックには特にグッときました。作業していない時間に、スケジュールに沿ってキャリブレーションが自動で行われることで、今までの外付けのキャリブレーションセンサーによる手動キャリブレーションの手間と管理からも開放されました。

遮光フードが付き、より画面の中に没入できるという印象です
内蔵のキャリブレーションセンサーが自動でキャリブレーションを実施します

Episode 02

Evolution

従来のイラスト手法にAI技術とHDR表現を取入れることで自らの限界を突破

今回は従来のイラスト手法にAI技術とHDR表現を取入れる方法を探りながら制作を進めました。AIには背景のアイデア出し、水槽の中の岩や水草、果実といった素材を描いてもらいました。redjuiceとAIのコラボレーション作品という感じでしょうか。ちなみに果実は“禁断の実”を表現しています。

まずは、Photoshop、CLIP STUDIO PAINT、Blenderを用いてイラストを作成していく工程ですが、ここではまだ、HDR表現は扱えません。従来通りAdobe RGBの色空間で制作します。ただ、後でHDR編集の工程に進むことを想定して、BlenderのレンダリングはHDR編集のための画像ファイルフォーマットであるOpenEXRの素材を用意しておきます。

HDR編集では、「DaVinci Resolve 18 Studio」という映像編集ソフトウェアを使います。この工程でイラストのライティングや光の反射、屈折などの表現をレイヤーに分け、4K解像度で再構築しています。

そしてHDR編集の要となるモニタリング環境ですが、ボード型のビデオI/O機器から、HDMIケーブルを介してCG2700XにPQ方式のHDRガンマの映像信号を出力しています。映像制作においては、グラフィックスボード出力によるPCのOSを介したモニター環境では映像信号を正しく取扱えないため、HDRに対応した専用のビデオI/O機器を経由して直接モニターへ信号を出力する必要があります。

CG2700Xには、PQ方式のHDRガンマを再現できるカラーモードが準備されているので、事前にColorNavigator 7を使ってキャリブレーションを行っておくだけで、正しいHDR表示環境が整います。

Photoshop、CLIP STUDIO PAINTでイラストを描きます
Blenderで制作した3DCGの素材を作品に活用します

HDR化によって得られる、SDRの限界を超えた表現力は、新たな発見がたくさんありました。従来の環境では明るい部分は白飛びし、暗い部分の階調は失われていました。そのため、今回はそういった、今まで描けなかった明るさや暗い部分の表現を特に意識して描いています。

HDR作品は私にとって初めての試みで、手探りでなんとか作ったものですがとても良くできたと思います。また、HDR作品の真の魅力はHDRに対応したモニターやテレビによる出力でしか見られないものなので、ぜひ、HDRが閲覧できる環境でご覧になってみてください。

こちらの作品は、HDR表示が可能なデバイスでは、HDR画質でお楽しみいただけます。

Episode 03

For real

HDRという目指すべき“リアル” 知らない領域へ踏み込む際に必要なもの

今回の試みでのポイントは、「HDRが自分の表現に何をもたらすか」を知ることだったのですが、同時に「自分が今までどれだけ明るさによって制限された色空間で描いていたのか」を知る機会にもなりました。そして、いざHDRの世界を知ってしまうと、そちらが本来の目指すべき”リアル”であり、今までの当たり前を変えなければいけない将来に気付いてしまったわけです。

HDRには多くの可能性が秘められていると思います。私もその可能性に応えるための準備はしておきたいです。技術についていけるかどうかという不安もありますが、むしろ“将来のお楽しみ”だと思い、前向きにチャレンジしていきたいです。

HDRにはまだまだ未知な部分が大きいです。新たに知らない領域へ踏み込もうとするときには、信頼できる相棒といえるカラーマネージメントモニターが今後より一層、必要不可欠になるでしょう。
ColorEdgeは今後も自分と切離せない存在であることの実感も、今回の試みの気付きの一つですね。

Making Movie

イラスト制作の模様は動画にて公開中です。
HDRでのイラスト制作に興味がある方はもちろん、redjuiceさんのコメント付きの制作工程は、絵を描く方の刺激にもなる内容です!

動画は、redjuiceさんのYoutubeチャンネルの
プレイリストでの視聴になります。

今回ご使用いただいた製品

Product

クリエイターに機動力を。
4K HDR対応の
27型プロフェッショナルモデル

ColorEdge CG2700Xは、プロフォトやデザイン、印刷から3DCG、映像制作まで、あらゆるクリエイティブワークに適した4Kプロフェッショナルモデルです。
モニターをドッキングステーション代わりに使える機能を搭載し、
クリエイターの機動力を増強します。