ハクトウワシ
アメリカ・アラスカ州
日を追うごとに寒さが増す晩秋のアラスカ南東部。
ヘインズ近郊のチルカットリバーには、多くのハクトウワシが集まっていた。
周辺の河川が凍結するなか、この川は結氷が遅く、活きたサーモンを捕獲できるからだ。
川沿いの樹上にはワシが連なり、時折、背びれがのぞく川面をじっと見つめている。
夜明けとともに狩りを始める彼らを暗いうちから待つが、朝の冷え込みは厳しく、気温はマイナス20℃を下回る。
極寒に耐える上下ダウンの装備でも、じっとしていると身体が深々と冷えてくる。
良好な漁場となる浅瀬では、ワシ同士の争いが激しい。
成鳥も幼鳥も横取りを狙い、かぎ爪で相手を攻撃し、水中に沈めることさえある。
なかには傷を負い、血を流すものもいる。
やがて川が凍れば、打ち上げられたサーモンの死骸が重要な食料となるが、そこでも争いが絶えない。
食料の豊富な春夏と比べ、冬はまさに生存をかけた厳しい季節だ。
ハクトウワシの食べ残しは、野鳥や小動物たちが食べ、残骸は森の養分となる。
それが豊かな森や河畔林を育み、生き物たちのすみかを作り、さらに川へ流れて豊穣な海を育てる。
今僕が目にしているのは、そうした壮大な自然の循環の、ほんの一場面にすぎない。
ハクトウワシの顔をよく見ると、一羽一羽顔つきが異なる。
しかし、総じて哲学的ともいえる風貌は、厳しい季節を生き抜いてきた証なのだろう。
いまこの瞬間を生き延びる、したたかな逞しさがみなぎっている。






