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第4回 同じ色数でも画質が違うヒミツ――液晶ディスプレイの「最大表示色/LUT」に迫る

液晶ディスプレイ講座IIの第4回では、最大表示色とルックアップテーブル(LUT)がもたらす階調特性について取り上げる。 これらは一般ユーザーが製品選びでチェックするポイントから一歩踏み込んだ要素になるが、色再現性に大きく影響するため、特にフォトレタッチやデザインなどの用途で「色」にこだわって液晶ディスプレイを選ぶ場合は、ぜひ知っておきたい。

  • 下記の記事は2009年2月18日に「ITmedia流液晶ディスプレイ講座II 第4回」に掲載されたものです。

液晶ディスプレイの最大表示色は要注意

 液晶ディスプレイのカタログには、たいてい「最大表示色」の数が記されているが、この数値を気にする人はそれほど多くないだろう。 昨今はほとんどの製品が1600万色を超える膨大な色を表現でき、色数の少なさが不満になることはまずないからだ。しかし、この最大表示色には思わぬ落とし穴がある。

 

 現在販売されているPC向け液晶ディスプレイは、PCから入力されるRGB各色8ビット(=合計24ビット)の発色数、つまりは「フルカラー」の映像信号を画面上できちんと描き分けることが求められる。 RGB各色8ビットの発色数とは約1677万色を意味する。その計算式は以下の通りだ。

RGB各色8ビットで約1677万色のフルカラーを再現可能

ここで覚えておきたいのは2点だ。1点は「現在主流の液晶ディスプレイのすべてが約1677万色フルカラーを実現しているわけではないこと」、もう1点は「約1677万色フルカラーを実現する手法にも違いがあること」だ。 現在、単体で販売されている液晶ディスプレイの最大表示色と発色の手法には、主に3つのタイプがある。

液晶ディスプレイにおける最大表示色と発色の手法

 

 本当の意味でのフルカラーを実現している液晶ディスプレイは、RGB各色8ビットの発色を8ビット駆動の液晶パネルによって再現する、表の「1」に当たる製品だ。 これに対し、表の「2」や「3」は、いわゆる「疑似フルカラー」と呼ばれており、一般に製造コストを低く抑えられる半面、8ビット駆動の液晶パネルと比べて原理的に階調表現力で劣る。

FlexScan S2242W-H
写真は8ビット駆動、約1677万色表示の22型ワイドモデル「FlexScan S2242W-H」

 

 スペック表記においては、表「3」の約1619万色/約1620万色は数字が異なるので判別しやすいが、表「1」と「2」はどちらも約1677万色なのでカタログから見分けるのが難しい場合もある。 ただし、8ビット駆動の液晶パネルはそれが画質における優位点となるため、グラフィックス用途などにおいては注意して選択したい(RGB各色8ビットの合計で24ビットと表現される場合もある)。

 

 余談だが、液晶テレビや業務用の液晶ディスプレイには、RGB各色を10ビット駆動で表現する液晶パネルを採用した製品もある。理論上では、実に「約10億7374万1824色(約10億7300万色)」という発色性能を持つが、 10ビットの発色を扱えるグラフィックスアクセラレータやソフトウェアも必要になるため、PC業界ではまだまだ一般的ではない。

 

 ここで、FRCについて簡単に解説しておこう。FRC(Frame Rate Control)とは、画面のフレーム書き換え/フレームレート、及び人間の目の残像効果を利用して、見かけ上の発色数を増やす仕組みだ。 例えば「白」と「赤」を交互に高速表示すると、人間の目には「ピンク」に見える。これと同じ理屈だ。

 

 「6ビット駆動+FRC」の液晶パネルの場合、液晶パネル本来の発色数は「6ビット(2の6乗=64)の3乗(RGB各色)=26万2144色」しかない。FRCはRGB各色に対して機能し、液晶パネル本来の1色と1色の表示間隔を変化させることで、 その1色と1色の間に「3色」の疑似色を生み出す(4ビット駆動のFRC)。これにより、RGB各色で「(6ビット-1)×3=189色」の疑似色が追加される。 計算すると「(6ビット+189=253)の3乗(RGB各色)=1619万4277色」(≒約1619万色/約1620万色)となるわけだ。

 

 さらに昨今では、FRCを発展させた技術を搭載した製品が増えている。従来のFRCを超える多ビットの駆動により、多階調の疑似色を生み出し、その中から「液晶ディスプレイのフルカラー」である8ビット(256階調)ぶんの階調を取り出し、約1677万色を実現するという。

 

 ところで、8ビット駆動と6ビット駆動+FRCの画質差だが、実際はパネル以外の要素(画像制御ICの質など)が画質に与える影響も大きいため、製品を見比べても違いが分かりにくい場合がある。 照明を落とすなど環境光の影響を極力減らし、シャドウからハイライトまでリニアに変化するグラデーションパターンなどを表示すると、比較的違いが見えやすいだろう。この表示傾向は、静止画、動画、ゲームなどを問わない。

フルカラー表示の比較
8ビット駆動によるフルカラー表示(左)と、6ビット駆動+FRCによる疑似フルカラー表示(右)のグラデーション表示例。これは傾向を分かりやすく強調したものだが、一般に8ビット駆動のほうが階調表現力が高い

8ビットを超えるルックアップテーブルの重要性

 「6ビット駆動+FRCは8ビット駆動より階調表現力が劣る」と述べたが、8ビット駆動ならば発色や階調性が優秀とは一概にいえない。 液晶ディスプレイで階調表現力を向上させるには、「ルックアップテーブル」(以下、LUT)が重要な役割を果たす。

 

 LUTとは、何らかの計算結果をあらかじめ格納しておく配列のことだ。あるシステムで定型的な計算処理が発生したとき、LUTの値を参照することで、計算処理を省略してシステム性能を高めることができる。

 

 液晶ディスプレイにおけるLUTとは、PC側からの入力信号(RGB各色8ビット)を演算して、液晶ディスプレイ側に適した出力信号(RGB各色8ビット)にマッピングする機能を示す。 安価な液晶ディスプレイはRGB各色8ビットのLUTだが、色再現性に注力した液晶ディスプレイはRGB各色10ビットや12ビットといった8ビット超の LUTを備えており、入力信号から出力信号へのマッピングにも10ビット以上の内部演算を採用している。

映像信号の入力から画面表示までのフローを示した図
8ビット超のLUTと内部演算精度を備えた液晶ディスプレイにおいて、映像信号の入力から画面表示までのフローを示した図。 最初は液晶パネルの個体差がないものと考え、目標とするガンマ特性(1.8や2.2など)を演算によって決定する。目標のガンマ特性を決めただけでは色温度が正しくないため、8ビット超の精度で色空間演算を行い、 白色の色温度とカバーする色域を設定する。出力側の補正では、液晶パネルが持っている個体差を吸収し、滑らかなトーンカーブを描くようにする。8ビット超のLUTによって、階調性の高い表示が可能となる

 

 まずは8ビットを超えるLUTの効能から解説しよう。例えば、カタログに「約1677万色(10億6433万色中)」と書かれた液晶ディスプレイの場合、 RGB各色10ビット(1024階調の3乗=10億6433万色)のLUTであることを意味する。 具体的には、PCからのRGB各色8ビットの入力信号を、液晶ディスプレイ内部でRGB各色10ビットに多階調化したうえで、最適なRGB各色8ビットの表示色を取り出して出力する。 これにより、出力におけるRGB各色のガンマカーブが整い、トーンジャンプや色相ズレが大幅に低減されるわけだ。12ビットLUTならば、約680億色の中から最適な約1677万色を取り出すため、10ビットLUT以上に色再現性と階調特性が向上する。

 

 続いて、RGB各色8ビットの入力信号を、液晶ディスプレイ内部でRGB各色10ビット以上に多階調化する演算処理について述べよう。LUTが10ビットや12ビットでも、多階調化を14ビットや16ビットで演算することで、最終的な階調性がより高精度になる。 最終的な出力が8ビットしかないのに、16ビットもの演算精度が必要なのかと疑問に思うかもしれないが、特に低階調域(シャドウ領域)を正確に描き分けるには、内部演算の精度が非常に重要だ。 基本的には、内部演算のビット数が大きくなるほど、低階調域のガンマカーブが理論値曲線に近づくと考えてよい。

 

 現在の液晶ディスプレイを見渡すと、比較的安価な価格帯でも、10ビットLUTを備えた製品がかなり増えている。ただし、LUTのビット数を超える演算ビット数を持った製品は、まだ上位クラスの製品のみだ。 特に12ビットLUTと14ビット/16ビット内部演算といった最高レベルの処理を行うものは、発色性能を最重視するカラーマネジメント対応の液晶ディスプレイ用の仕様といえる。

 

 実際に8ビットLUT+8ビット内部演算と、10ビット以上のLUT+10ビット以上の内部演算を見比べてみると、思いのほか違いが分かることがある。このクラスの製品は画像制御ICも高性能なものを搭載しているため、 画質にバラツキがあるエントリークラスの製品と比べて、高いレベルでの画質差が現れやすいのだろう。黒から白へのグラデーションを表示してみると、多ビットLUT/内部演算のほうがスムーズで、暗部階調の描き分けができる傾向にある。 こうした製品では、トーンジャンプや色相ズレが皆無に近く、グラデーションの明暗が自然に描かれてコントラストも安定している。 色再現性を最優先する用途にはもちろんだが、少しでも高画質を求めたいという一般的なPCユーザーにも最低10ビットのLUTを搭載した製品をおすすめしたい。

階調特性が改善されるイメージ
10ビット以上のLUT+10ビット以上の内部演算による調整で、階調特性が改善されるイメージ。素の状態よりも理想のガンマ値に近づき、滑らかなグレースケールを表現できる

ルックアップテーブルの精度をさらに高める3D- LUTとは?

 一部のハイエンド液晶ディスプレイは、進化したLUTの「3D-LUT」を採用している点にも注目したい。従来のLUTはRGB各色ごとにLUTを持ち、特定の1色を表現するときにRGB各色のLUTを参照し、 それぞれのLUTから取り出したRGBの3色を使って目的の1色を算出していた。

 

 一方の3D-LUTは、RGB各色をブレンドした立体的なLUTになっている(縦/横/高さにR軸/G軸/B軸を割り当てた立方体のイメージ)。 LUT上にRGBをブレンドした中間階調のポイントを持つため、中間階調のカラー表現やグレースケールの正確性が向上するのだ。

 

 ナナオのワイド液晶ディスプレイで例を挙げると、ColorEdgeシリーズの「CG242W」が3D-LUTを搭載している。従来のLUTと比較して、中間階調における理論値と実測値の差が非常に小さくなる。

ColorEdge CG242W
「3D-LUT」を採用したナナオのカラーマネジメント対応24.1型ワイド液晶ディスプレイ「ColorEdge CG242W」

 

 3D-LUTは、カラーマネジメント環境で色域の変換を行うときにも、威力を発揮する。ある色域に割り当てられた約1677万色を別の色域に再割り当てするとき、変換元の色域の情報ロスを最小限に抑えつつ、 高い精度で別の色域に変換できるのだ。加えて、RGBのブレンド(加法混色)の色再現性が向上しているため、明度や彩度、色相などを調整するレタッチ作業においても、ユーザーが意図するパラメータ操作と画面上の発色がほぼリニアに対応できる。 こうした点は、何よりも正確な発色が求められるカラーマネジメント対応の液晶ディスプレイにおいて、最も重要な性能と機能だろう。

LUTと3D-LUTの比較
従来のLUTに比べて、3D-LUTは色調整ポイントが多く、加法混色性能が向上している

 

 このように液晶パネルの駆動ビット数とLUT、そして内部演算の精度によって、液晶ディスプレイの色再現性は大きく変わってくる。 同じようなスペックの製品でも実際に見比べてみることで、予想外に表示傾向の違いが感じられることは少なくない。ディスプレイの画質はカタログのスペック表だけでは決して語れないため、 購入前には一度実機を自分の目で確かめておくことを改めておすすめする。

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