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第1回 光沢液晶 vs. ノングレア液晶──それぞれのメリット/デメリットを理解しよう

液晶ディスプレイを購入しようと思ったとき、どんなところをチェックするだろうか。画質、スペック、デザイン、価格……。 比較すべきポイントはたくさんある。せっかく単独の製品を買うのだから、スペック数値だけでなく、実用面も十分考慮して選びたいところだ。 今回から数回にわたって、液晶ディスプレイの賢い選び方を解説していく。第1回は「光沢液晶」対「ノングレア液晶」だ。

  • 下記の記事は2005年5月26日に「ITmedia流液晶ディスプレイ講座I 第1回」に掲載されたものです。

光沢液晶とノングレア液晶のメリット/デメリット

 ここでいう「光沢液晶」と「ノングレア液晶」とは、液晶画面の表面処理を指す。

 

 これまで液晶ディスプレイといえばノングレア液晶だったが、ここ最近、メーカー製PC(デスクトップPCと液晶ディスプレイのセットモデル、及びノートPCの液晶ディスプレイ)を中心に光沢液晶が急増している。メーカー製PCにいたっては、個人向けモデルの大部分が光沢液晶だ。単独製品ではまだノングレア液晶が多いものの、光沢液晶の割合も徐々に増加中だ。

 

 光沢液晶とノングレア液晶の大きな違いは、画面の見え方に集約される。

 

 光沢液晶の特徴は、画面がツヤツヤピカピカであることだ。画面の色が鮮やかで、黒が引き締まってコントラストが高い。静止画や映像がとてもキレイに見えるのがメリットで、メーカー製PCで広く採用されているのもうなずける。

 

 その一方で、外光の映り込みが大きいというデメリットもある。自分の姿や背景が画面にはっきりと映り、蛍光灯などの光もそれなりに強く反射する。程度の差はあるが、目が疲れやすいのは確かで、映り込みが気になって画面に集中できないという声も聞こえてくる。

 

 また、画面の表面にキズがつきやすいため、掃除にも注意が必要だ。画面を一拭きするとき、キズに気を付けるのはもちろん、化学クリーナーを使うと画面の表面が変質する危険性もある。

光沢液晶の画面の見え方
光沢液晶の画面の見え方。色が鮮やかで黒が引き締まって見えるが(左)、蛍光灯などの外光が強く映り込んでしまう(右)

 

注) ナナオ製液晶ディスプレイに光沢処理を施した同社製液晶保護パネルを装着し、光沢液晶の画面の見え方を擬似的に再現しています。

 

 対してノングレア液晶のメリットは、外光の映り込みが少なく、長時間の使用でも目への負担が軽いことだ。一般的なオフィスや官公庁、教育現場などではノングレア液晶が圧倒的に多い。 画面の表面もキズがつきにくく、柔らかい布なら少し強めに拭いても大丈夫だ(微細な繊維で作られた無薬品のOAクリーナーが効果的)。

 

 一方、ノングレア液晶のデメリットは、光沢液晶に比べて静止画や映像の発色が地味なことと、画面がやや白っぽく見える場合があることだ。 特に後者は、発色の鮮やかさや見かけ上のコントラストを落とす原因でもあり、画質面で「ノングレア液晶<光沢液晶」というイメージを抱かせる要因になっている。

ノングレア液晶の画面の見え方
ノングレア液晶の画面の見え方。上の光沢液晶と同じ条件で撮影しているが、蛍光灯の映り込みはない(右)。ただし、蛍光灯の位置がやや白っぽくなっている

光沢液晶とノングレア液晶の仕組み

 ここからは、少し技術的な仕組みと「色」の話をしていこう。仕組みを知ることで、先述してきたメリットとデメリットをよりよく理解できるはずだ。

 

 光沢液晶か、ノングレア液晶かを問わず、液晶パネルの表面には偏光フィルタが配置されている。この偏光フィルタの表面処理を「グレア(glare:ぎらぎらする光)」にすれば光沢液晶、 「ノングレア(non-glare)」にすればノングレア液晶となる。

 

 グレアとノングレアの違いは、先にノングレアを知るほうが理解しやすい。ノングレアは、偏光フィルタの表面を微細な凹凸に加工している。 凹凸の具合で画面の見え方が違ってくるので、デバイスメーカーの重要なノウハウとなっている部分だ。

 

 ノングレア液晶の表面に当たる外光は、表面の凹凸で乱反射(拡散)するため、ユーザーの目に届きにくくなって映り込みが少なく見える。 その反面、液晶パネルのバックライトからの光も、画面表面の凹凸でわずかに乱反射してしまう。このため、外光の乱反射に加え、液晶パネルからの光がユーザーの目に届く前に拡散するため、「黒」が多少なりとも明るくなり、シャドウの浮き上がりや画面の白っぽさにつながるわけだ。

ノングレア液晶の画面の見え方
ノングレア液晶の表面構造。表面が凹凸しているため映り込みが少なくなるが、外光及び液晶パネルの光の乱反射により、画面が白っぽくなってしまう

 

 ただし、最近のノングレア液晶は、液晶パネルのRGBフィルタやシャッタ開口率などの改善によって、引き締まった黒の表現と全体的な白っぽさの抑制がかなり進んでいる。

 

 偏光フィルタのグレア処理(光沢液晶)は、表面がノングレア液晶のような凹凸ではなく、平滑になっている。液晶パネルのバックライトからの光が忠実に通り抜けてユーザーの目に届くため、 コントラストの向上と発色の鮮やかさを生み出しているわけだ。しかし、偏光フィルタの表面で外光もきれいに反射するため、それが映り込みとなって現れる。

 

 光沢液晶でも、外光反射を低減するARコートという工夫が施されている。ARコートは、特定の波長を吸収することで外光の反射を減らす。 吸収する波長の範囲を広げれば(多層ARコート)それだけ外光反射を抑制できるが、コスト高と輝度低下につながってしまう。この当たりのさじ加減も、ノングレア処理の凹凸と同じように、デバイスメーカーの重要なノウハウだ。

光沢液晶の表面構造
光沢液晶の表面構造。表面の平滑性が高いため、反射低減処理を施していても映り込みが大きくなってしまう

表面処理で「色域」や「階調性」に差が付くのか

 「色」の見え方は、環境光(周囲の光)と人間の視覚(目の錯覚)によって大きく左右される。日頃使っているディスプレイでも、部屋の明かりを点けたり消したりしてみれば一目瞭然だろう。 目の錯覚による色の見え方の違いについては、PCのデスクトップ中央にデジカメ写真を小さめに表示したままデスクトップ背景色を変えてみるとよく分かる(余談だが、色を正しく判断するためには、背景を50%グレーに設定する)。

 

以上を踏まえて光沢液晶とノングレア液晶を比較すると、先述したノングレア液晶の外光の乱反射と「白っぽさ」が人間の視覚に影響を及ぼしていること が分かる。 特に低輝度部分(シャドウ寄り)において、外光とバックライト光の乱反射が階調性を損ねているのは事実だ。高彩度領域においても、ノングレア液晶の「白っ ぽさ」が視覚的な彩度低下を招いている点も否めない。

 

 ちなみに、液晶ディスプレイ本来の色域や階調性に関しては、ナナオなどのメーカーは基本的に暗室で測定している。 それによると、外光がまったくない状態で光沢液晶とノングレア液晶を比較すると、色域や階調性にはほとんど差がないそうだ。

 

光沢液晶とノングレア液晶、あなたならどっちを選ぶ?

結局ありきたりな結論になってしまうのだが、光沢液晶を選ぶか、ノングレア液晶を選ぶかは、ユーザー自身の用途次第だ。静止画や映像の鑑賞が多い人は、光 沢液晶のほうが満足度が高いだろう。 目が疲れやすいという弱点はあるものの、集中力は静止画や映像コンテンツに向かうため、外光の映り込みは思うほど気にならない。

 

 逆に、インターネット用途やビジネスアプリケーション、静止画や動画の編集などには、ノングレア液晶が向いている。 こうした用途では、目と集中力は画面上の比較的狭い範囲に注がれるので、光沢液晶だと映り込みが気になって集中力が削がれてしまうからだ。もちろん目の疲れ具合にも、かなりの差がある。

 

 筆者はメーカー製PCや単独の液晶ディスプレイを試用する機会が多いのだが、比較的ラフな姿勢でリラックスしながら画面を見る場合は、光沢液晶のほうが確かに美しく見える。 しかし、何らかの「作業」を始めると、光沢液晶はやたらと「ギラギラ」しているように感じてしまう。

 

 1つ注意してもらいたいのは、ショップの店頭で光沢液晶とノングレア液晶を見比べるときだ。ショップの店頭では、明るい照明の下で複数の液晶ディスプレイが並んでいるケースが多いだろう。

 

 このような条件下では、光沢液晶がとてもキレイに見えるのだ。ノングレア液晶はどうしても発色が地味で、鮮やかさに欠けるという感覚を持ちやすい。 液晶パネルの輝度とコントラスト比、ショップの展示の仕方なども影響するが、一般的な家庭の環境光はショップよりはるかに控え目だ。

 

 液晶ディスプレイを比較する場合はこうした点も踏まえつつ、設置する場所やもっとも長時間ながめる画面、もっとも高い頻度で表示する画面などにも思いを巡らしながら選んでほしい。

 

 次回は「輝度」と「コントラスト比」を解説する予定だ。どちらも高いほうが良いのか、それともある程度以上なら十分なのかを、技術的な見地も交えて探ってみたい。

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